2024年5月13日

鉄鋼業界で働く/女性現業職編/インタビュー/製造現場を選択肢の一つに

三井物産スチール系のステンレスコイルセンター、MSSステンレスセンター(本社=群馬県太田市、小林正弘社長)は、営業職のほかに本社工場も女性が活躍している。製造現場で作業員の高齢化や人手不足が社会問題となっている今日、次世代を担う女性や若手、外国出身者など多様性あふれる工場へと変わりつつある。昨年入社しミニスリッターラインを担当する臼倉知世さんと幅1メートル以下のレベラーラインで働く桑原真美さんに話を聞いた。

――入社の経緯から。

臼倉「夫の地元である群馬に移住を決めたこと、製造業で働こうと考えていたことがきっかけです。以前、大工として働いていたことがあり、体を動かして、ものづくりに関わることが楽しいと感じていました。大工の世界も、鉄鋼業界と同様に男性ばかりの社会です。しかし私が居た会社は、女性の先輩もいて安心して働ける環境でした。当社が女性を積極的に採用しているという話を聞き、もうここしかない、と思い入社しました」

桑原「臼倉さんと同じく、体を動かす仕事が好きで、製造に関わる仕事を探していました。私は群馬県内の高校を卒業し、電子機器などを組み付ける工場で働いていたのですが、新型コロナ禍をきっかけに自分のキャリアについて考えるようになりました。動物が好きで、好きなものを仕事にしてみようと、牛の肥育などを行う牧場に転職しました。この仕事も好きでしたが、結婚を機に福利厚生や産休育休制度が充実している会社で働こうと考え、仕事を探す中で当社を見つけ、小林社長から『女性を積極的に採用している』というお話もあり、入社しました」

――仕事をしていて大変だったことは。

臼倉「普段、ミニスリッターで刃組みや切断、オペレーション作業を行っていますが、コイルを倒して出荷する梱包作業は非常に難しいです。特に床上操作式クレーンを用いてスリットコイルをゆっくりと寝かせる作業は、スリット材が重く、丁寧さが求められます。これができるようになった時はうれしかったですね。私はフォークリフトの免許を持っており、前職時代に運転していましたが、こんなフォークリフトの使い方があるのか、という刺激を受けたこともあります。時々、コイルセンターで女性が働いていることを、お客さまはどう受け止めるのだろうか、と考えてしまうことはあります。それでも、女性が手がけた良い製品であったと、お客さまに思っていただけると幸いです」

桑原「鋼材以外でも、例えば鋼板に貼るビニールのロールも重いですね。もちろんクレーンで持ち上げることがほとんどですが、男性だったら手で持てるのに……という歯がゆい気持ちになることもあります。私はオペレーターを担当しているのですが、向け先によって、鋼種やサイズ、梱包をはじめさまざまなルールがあります。その組み合わせは無限といってもいいほどです。歩留まりやロスを防ぐために、日々神経をとがらせながら取り組んでいます。無事に作業を終えた時にやりがいを感じています」

――女性がこの業界で働くことについて。

臼倉「この仕事が面白そうだなって思う方がいらしたら、ぜひ一緒に働きましょう、と思っています。男性ばかりの会社であっても、女性がいることで安心だと思ってもらえたらとてもうれしいです。そのためにも、周りが安心して楽しく働けるような人になりたいです」

桑原「少し前だったら『女性には厳しい業界』というものがありましたが、今はさまざまな場所で女性が働いています。この業界も女性が入ってきていることを一人でも多くの人に知ってほしいです。私のように、接客や事務よりも、現場で、体を動かす仕事をしてみたいという方がいるかもしれません。選択肢の一つに私たちの仕事が入ってくれたらいいなと思いますね」(北村 康平)



鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。

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