北野嘉久・JFEホールディングス社長の会見要旨。
――利益倍増の達成時期とその時の粗鋼生産のイメージは。
「グループとして『ありたい姿』を示した。現時点で具体的な達成時期は決めていない。3―5年間の単位では困難だが、長期的に達成していく目標として掲げた。実力を高め、足らざるところを改善し、戦略を練る。カーボンニュートラル(CN)時代に向けた鋼材を供給していく。『量から質への転換』を図るが、グローバルでの粗鋼生産量の目標値は定めていない」
――海外での成長戦略をどう考えている。
「海外で収益を上げていくことは利益倍増に必須だ。海外戦略として主に中国、ASEAN、インド、北米に展開してきたが今後、どの地域に注力していくべきか、長期戦略として考えていかなければならない。議論を重ねていくが北米、インド、ASEANではインドネシア、そして中東は成長が見込める。北米では電炉メーカーのニューコアと自動車用鋼板の合弁会社をメキシコで立ち上げているが、さらに進化させる事業を考えたい。インドではJSWスチールに15%出資し、合弁で事業を立ち上げているが、次なるインドでの展開を考えていく必要がある。中東は鉄鋼の消費地として大きくないが、CNを目指す上で有利なエネルギー環境があり、連携してCNを目指す。海外での事業展開を攻めの投資として積極的に考えていく」
「商社事業では北米で新たな企業買収を発表した。チャンスを捉え、挑戦していく。鉄鉱石に関してはCNの鉄鋼を造る上で必要な鉄鉱石原料の投資を考えている。高品質の原料炭の投融資も必要になると考えている」
――CNに向けた研究開発をどう進めていくか。
「大きく3つあり、一つはカーボンリサイクル高炉法。2025年に炉内容積150立方㍍の実証高炉を立ち上げる。実装化するには中規模の実証炉での開発が必要であり、30年までに中規模高炉での実証試験を行い、実装化に向けた開発を達成したい。安価でグリーンな水素が供給されないと実装できないので政府の対応策などを見極め、実装時期を判定していく。2つめは高品質鋼を電気炉で造ること。27年末に西日本製鉄所倉敷地区に大型電炉を実装し、商業規模で生産することを検討している。3つめの直接水素還元法は最もハードルが高く、30年代半ばにかけて基礎研究の開発を完成させたい」
――電気自動車市場の伸び悩みが国内外で指摘されるが、電磁鋼板の能力増強計画に変更はないか。
「当社が生産する無方向性電磁鋼板のライン増強は高級鋼の領域であり、需要に心配はない。しっかりと新ラインを立ち上げ、収益に貢献させていきたい」
――高付加価値品の比率は現在50%程度。「量から質への転換」を進め、利益倍増を目指すためにどのように同比率を向上させていくか。
「自動車用鋼板のハイテン化は今より進むと考えている。しかも単なるハイテンではなく、加工性の高いハイテンのニーズが高まると考えられ、高加工性のハイテンの能力増強に取り組む必要がある。CN社会実現のためには電動化、CNのエネルギーが求められ、方向性電磁鋼板や無方向性電磁鋼板の需要は増えていく。高品質の電磁鋼板の比率を上げていく。国内だけでなく、インドでは電磁鋼板のシェアを広げ、北米では自動車用鋼板のシェアを高めていくことも考えていきたい」