2024年3月12日

鉄鋼業界で働く/女性管理職編/インタビュー(下)/一緒にロールモデルを

住友商事グローバルメタルズ(以下SCGM)では中途・新卒を問わず数多くの女性が総合職として働いている。鋼材第二本部線材特殊鋼鋳鍛事業部線材特殊鋼チームのサブリーダー、篠田真衣さんは海外駐在を経験し、家庭と仕事を両立。管理職として後輩らとともに働いている。業務内容、子育てへの不安、今後の目標を聞いた。

――インターンを経験。

「本来の仕事とは別業種を、新興国のローカル企業、かつ資本関係も何もない場所で経験し人間力を高めるという研修です。2014年にSCGMでも導入され第1号で参加。タイの広告代理店で1年間勤務しました。最初の3カ月はマーケティング戦略の部署で、コンサルティングのような仕事をしました。受験戦争の需要に備えた学習塾展開など、日本人の知識が生かせる業務でしたね。残りの9カ月はさまざまな企業のテレビCMやポスター製作など、皆さんが思い浮かべるような広告代理店の仕事に携わりました」

――多くを学んだ。

「東南アジアの方々の考え方、仕事の進め方、お客さまとの距離感について学びましたね。お客さまに対する考えが変わりました。今までは仕入れ先のために動いている部分があったんです。仕入れ先が必要としている情報をかき集めたり、仕入れ先のキャパシティーに余裕があるからそのために拡販をしたり。帰国後は担当するお客さまが変わり、仕入れ先の幅も拡大。よりお客さまの困りごとを解決したい、部署や会社の業績のために働きたいという思いが強くなりました。お客さまへと軸足が変わりましたね」

――その後は。

「中国・東南アジア・北中米・欧州向けに特殊鋼の輸出入、国内販売、三国間を担当。7年間携わりました。自動車向けがほとんどですが、医療向け、太陽光発電のプラントシステム向けにも関わるように。また線材を扱う中国の事業会社も担当。管理や現地スタッフの方とのやりとりを担当しました」

――管理職に。

「19年4月に管理職に就任しました。サブリーダーですね。プロパー入社の女性総合職の中で管理職の割合は約15%。私の世代は入社約10年目で管理職になる社員が多かったので、特に身構えることはなかったですね。今は総合職の男性2人が後輩にいます。一緒に案件を進めるので、部下より後輩と呼ぶほうがしっくり来ますね」

――出産を経験。

「22年6月―23年3月に産休・育休を取得しました。中途入社の方や出向者の方々はたくさん経験しているのですが、新卒プロパーの女性総合職は私が初めて。2児を出産した先輩に、時短勤務で残業ができないこと、保育園の送迎などで出張に行けないこと、キャリアが築けない不安などを相談しました。すると『諦めが肝心』だと。自分の思い通りに仕事は進まないから諦めなさい、周囲に迷惑を掛けるのは仕方ないから、子供から手が離れた時に子育て中の後輩に還元しなさいとアドバイスされましたね。自分への厳しさや要求値を下げて乗り切りなさいと言われ、本望ではないので複雑な気持ちでした(笑)。でも出産後、子供を優先しようと腹をくくりました」

――現在の業務は。

「23年4月からタイ向けの特殊鋼輸出、遠隔地向け輸出業務を担当しています。前者はのちのち自動車に使われるものですね。新しい仕事ではありますがタイも仕入れ先もなじみがあるので、知っている方が多くてすんなり入ることができました。時短勤務を利用して子育てや家事と両立しています」

――印象的な経験を。

「インターンから帰国後の7年間に、中国から輸入した鉄鋼製品を国内や海外工場に販売する規模の大きな取引を担当していました。お客さまはものすごくシビアで、中国の仕入れ先もトップダウンで厳しい。双方一歩も引かない交渉に関わっていたのですが、妊娠を機に担当を離れるとなった時、関係者の方々が私のいない場所で褒めてくださっていたと聞いて。厳しい局面に何度も直面しましたが、その大変さが吹っ飛びましたね。やってて良かったなと。産休前の1つの自信にもつながりました」

――女性が働くことについて。

「男性社会なので、もしかしたら同期の男性の方が早く難しい案件を担当し、海外に行かせてもらえるかもしれないと周囲の先輩方から聞いていました。そうなった時に悲しまないよう先に教えてくださったようです。でも実際は4年目で海外勤務を経験し、9年目で管理職に。女性だからとお客さまに嫌がられることはなく、むしろ珍しがってもらえました。上司も良い意味で女性ということを意識せずに接してくれて。残業もさせてくれるし、しっかり叱ってくれました。嫌だと感じる女性もいるかもしれませんが、私にとってはうれしかったです」

――女性に増えてほしいか。

「鉄に興味のある女性がいらっしゃれば増えてほしいですね。一緒にロールモデルを作っていきたいです」

――今後の目標を。

「子育て中かつ夫も転勤があるので、その時その時で自分の仕事に全力を注ぎたいです。ずっと営業なので、投資案件の知識や経験がありません。事業開発の仕事もいつか挑戦してみたいです」(芦田 彩)



鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。

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