住友商事グローバルメタルズ(以下SCGM)では、鋼材第二本部線材特殊鋼鋳鍛事業部線材特殊鋼チームのサブリーダー、篠田真衣さんが営業活動に日々まい進している。英語を使う仕事への憧れが強く、世界中の人々と関われる鉄鋼商社を選んだという篠田さん。入社のきっかけや業務内容、女性総合職の労働環境について聞いた。
――入社までを。
「中学2年生の時に自治体が実施しているオーストラリアとの交換留学に2週間参加し、初めて海外に行きました。相手の話が分からず、自分が言いたいことも言えなくて、悔しい思いをしましたね。英語が話せたら世界中の人と交流でき友達になれるのではと思うようになりました。帰国後に親に英語で一番有名な大学がどこか聞くと『上智大学だよ』と。今振り返ると親が憧れの大学だったため、そう言ったそうなのですが(笑)。それを聞いて勉強に励み、上智大学文学部英文学科に進学しました。ゼミでは現代イギリス文学からダイバーシティーなどを学びましたね。4年生の時には米サンフランシスコに1年間留学、インターンシップも経験しました」
――就職活動は。
「帰国後に就活を開始しました。親戚の影響で最初は空港のグランドアテンダントに憧れていましたね。でも留学やインターン経験と自己分析を基に『鉄・商社・営業』に焦点を絞りました。英語を使って世界を股にかける仕事がしたいという思いは変わらないのですが、日本のものづくりを支える仕事に就きたいという思いが強くなって。米国に行った際、自動車やパソコンなど日本の製品がいたるところにあったのが印象的だったんですよね。ある鉄鋼専門商社の説明会に参加した際に、鉄の営業の仕事があると知りました。スプーンから宇宙産業までありとあらゆる分野で扱われ、鉄が使われていない国はないと聞いて。それが胸に刺さって、これしかないなと」
――SCGMを選んだ理由を。
「鉄の専門商社は大きく分けてメーカー系、総合商社系、独立系と3種類ありますよね。ダイナミックな仕事ができるのは総合商社系ではないかと当時思っていました。説明会やOBOG訪問も私の好きな雰囲気で、この一員として働きたいなと思い、運良く採用していただきました」
――入社後は。
「2011年に入社しました。同期は総合職6人、一般職6人の計12人で、総合職の女性は私1人でしたね。当時は女性総合職のプロパーの先輩がいたのですが、転職などをされた影響で、現在はSCGMのプロパー女性総合職の中で私が最年長です」
「最初は中国・東南アジア・北中南米向けの自動車用特殊鋼輸出を3年間担当。その後タイの広告代理店で1年間インターンシップを経験し、帰国後は全世界向けに特殊鋼の輸出入、国内販売、三国間を担当しました。中国の事業会社管理も含め7年間携わりましたね」
――苦労した。
「初配属の際はタイに日本の鉄を輸出する業務から始め、そこから少しずつ担当が増えていった感じです。最初はこちらの要求に応えていただけることがこんなに難しいのか……と壁にぶち当たりました。タイは緩やかに働く風潮があるので、仕入れ先に求められて現地スタッフの方に10個の質問をお願いしても2、3個しか返事が来なかったり、その2つ3つも違和感があってツッコミを入れると間違っていたり。現地スタッフとのやりとりに悩みましたね。先輩のアドバイスを基にかみ砕いて説明したり、小分けにして早く回答が必要なものから質問をしたりして、日本とタイ、お互いのペースが合うように心がけました」
「当時、同時に担当していた中国のお客さまは日本語が堪能な方が多く、現地スタッフを介さず直接やりとりをしていました。中国の方はオブラートに包まず要求をダイレクトにお伝えになるので、ものすごく驚きましたね。現地スタッフとのやり取りの違いを痛感し、より一層お客さまに丁寧に対応せねばと気が引き締まりました」
――女性が相談しやすい環境が整っていた。
「入社時から、SCGM入社の女性総合職と住友商事金属部門所属の女性総合職で構成される『鉄女会(てつじょかい)』という集まりがあります。SCGMは複数の会社が合流した経緯があり、社員のバックグランドもさまざま。入口が違うといろいろと働き方や考えが違うのかなと不安だったのですが、住友商事出身の女性の先輩が『SCGMの女性総合職は私が引っ張っていかないと!』という使命に燃えている方で。鉄女会を結成され、仕事やプライベートを問わず、女性ならではの相談ごとなどができる機会を作ってくださいました」
「四半期に1度集まって、そこでロールモデルの存在に出会うこともありましたね。新型コロナウイルスの影響で一時的に会ができない時期もありましたが、自分の経験を後輩に伝えることもできるので、存続していてありがたいと思っています。鉄女会を作った先輩は住友商事へ戻ってしまいましたが、今も会に関わってくださっていますよ」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。