2024年2月13日

鉄鋼業界で働く/女性管理職編/インタビュー/家庭と両立できる環境を

鉄鋼業界で管理職として働く女性が増加している。日本製鉄名古屋製鉄所の薄板部熱延技術室熱延技術課主幹、加藤菜緒子さんは2011年に入社。製造部門の管理職として、部下や後輩を指導・育成しながら働いている。加藤さんに入社までの経緯や業務内容、女性が働くことへの思い、目標について聞いた。

――入社までを。

「小さい時から理科が好きで、日ごろ目にする現象の『なんでだろう』に答えをくれる自然科学が興味の対象でした。大学院では金属組織学を専門とし、熱電変換材料の金属間化合物を研究対象に。金属組織の制御方法、組織ができる過程の読み解き方を学びました」

――就職活動は。

「金属組織制御ができる仕事がしたくて。日本製鉄は、在籍していた学校で社員の方の講義を半期にわたり受講する機会があったり、研究室の先輩が複数就職していたり、当時から親近感がありました。実際に見学や訪問で社員の方とお会いし、自分にとって一番違和感のない会社という印象を持ち入社を決めましたね」

――11年に入社。

「品質管理部薄板管理室で6年、現在所属している薄板部熱延技術室で2年、再び品質管理部薄板管理室で4年勤務。昨年11月から現部署で働いています」

――現在の業務を。

「仕上げ圧延と温度制御を担当しています。仕上げ圧延は今回初めて担当する工程。板がうまく通らないトラブルがあるセクションなので、なぜそうなるのか、どうすればうまく通るかを考えながら働いています。異動して4カ月目なので日々勉強中です」

――大変だったことは。

「14年に製鉄所で火災があった時が印象に残っています。全ラインが休止し、その時の生産・出荷対応が大変で、通常では考えられない短工期や一品生産を行いました」

――21年から管理職。

「私は2つの部署を行き来していて人間関係がすでに構築できており、管理職を務める上で困ることはありませんでしたね。現在は部下が2人で、うち1人が女性です。以前から後輩が配属されるたび、日常業務のフォローなどで面倒を見るなど管理職に近い業務がありました。なので管理職になったからといって大きな違和感はありません。実務から少し離れるものの、実務経験を積んだ今の自分だからこそできることがありますし、人を育てる楽しさもあるのかなと。実務が好きなので名残り惜しいですが……」

――製鉄所で働く魅力を。

「モノを作って出荷するという実感があることですね。現場と一緒になって試行錯誤してモノ作りができることってなかなかないと思うので。私にとって働きがいがあります」

――女性活躍について思うことは。

「性別によらず、家事や子育てをしながら目いっぱい仕事をするのは本当に大変だと思うんです。私も仕事と家事の両立に苦労をしていますから。女性活躍が進み、男性を含め家事や子育てと仕事を両立する人が増えて、制度や職場の組織運営について課題が見えてきたのでは。それぞれの家庭、時期で負担や悩みは多種多様。我慢や無理を減らし、納得して両立していくために職場でも気兼ねなく話し合いができる環境が重要だと感じます」

「サポート制度の面では、男性の育休取得が急速に進んだり、ベビーシッターの補助が使えたりと、どんどん選択肢が増えてきていて心強いなと。いろいろな声に合わせて進化し続けてほしいですね」

――女性に増えてほしいか。

「増えてほしいです。数って力になりますし。最近女性が増えたとはいえ、比率で見るとまだまだ少ない。女性がいる事がもっと当たり前になれば、女性目線の考え方や意識も“あって当たり前"になるんじゃないでしょうか。多様な価値観が根付くことで、女性だけでなく男性の働きやすさにもつながるかと」

――女性が安心して働ける環境づくりを行っている。

「名古屋製鉄所内の女性総合職で年2回集まる会を企画。悩みや相談を言い合う場を作っています。製鉄所は各ラインの近くに建屋があるので自然体で話すきっかけがすごく少なくて。私自身はたまたま同期の女性総合職(事務系)と仲が良くいろいろと相談できましたが、女性が少ない製鉄所で、皆が同じように悩みを相談できる相手がいるとは限りません。少ないからこそ気軽に話す場を作ろうと提案しました」

――会の内容は。

「20―40代の方がいて、日々の食事から体調、子育て、ワークライフバランスまでさまざまな話題が上がります。この会で初対面という社員も多く、そこから生まれる友情や関係性も。この会から派生したコミュニティーが少しでも支えになればうれしいですね」

――業界にどう変わってほしいか。

「認知度が上がってほしいです。私自身は専門分野で、学生時代に社員の方のお話を聞く機会があったので身近に感じていましたが、皆がそうではないですから。また業界への就職以前に、日本は科学技術分野に進む女性がとても少ない。学校の授業で科学に興味を持てるカリキュラムが増えてほしいです」

――目標を。

「熱延関連の業務で経験を重ねて知識を身に付けているので、しっかりと経験を生かして仕事を進めたいですね。将来どんな風になりたいという具体像はないのですが、まずは一緒に働く部下や後輩がきちんと仕事をできるようになり、今後良い先輩・上司となれるよう、助けてあげられる存在になれたらなと。そんな気持ちでいます」

(芦田 彩)



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