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2024.12.4
2023年12月19日
鉄鋼業界で働く/女性研究職編/インタビュー/品質・信頼向上に寄与
鉄鋼業界で働く女性の職種が広がりを見せている。日本製鉄の技術開発本部鉄鋼研究所では、山村実早保さんが2016年に入社。現在は材料信頼性研究部応用力学研究室研究第一課の主任研究員として、水素エネルギーに関連する研究を日々行っている。山村さんに、業務内容、ライフイベント、今後の目標などを聞いた。
――入社までを。
「お茶の水女子大学大学院の理学専攻物理科学コースで学んでいました。幼少期からナショナルジオグラフィックが好きで、地球科学やエネルギーシステムにずっと興味を持っていて。高校の時に、『地球科学を知りたいなら物理を学びなさい』と恩師に言われ今に至ります。院では、地球の中心の圧力である超高圧下の物性について研究していましたね」
――就職活動は。
「エネルギー関連で社会に貢献できる仕事がしたいと考えていました。中でも水素エネルギーが二酸化炭素を排出しない地球に優しい存在だと知り、関わりたいと思うように。日本製鉄は、就職活動を進める中で水素還元製鉄の開発に取り組んでいることから存在を知りました」
――その後を。
「日本製鉄が高圧水素用ステンレス鋼を開発・販売していると知り、より興味を持ちました。兵庫・尼崎にある研究開発センターの方が開発に関わっていると採用担当の方に教えていただき、お話を聞きたくて東京から訪問。研究開発に携わる方々の豊かな考え方に触れ、一緒に働きたいと思い入社を決めました」
――入社後は。
「技術系の同期は約350人で、うち女性は50人でした。7人に1人くらいの割合ですね。最初は技術開発本部鉄鋼研究所の水素エネルギー材料研究部に配属されました」
――業務内容を。
「これまで技術開発本部の中で2回、部署異動しています。一貫して水素環境下で使用される鋼材の研究開発を行ってきました。先ほどお話した研究部と18年に配属された先端技術研究所基盤メタラジー研究所では、鉄鋼材料の特性に水素が及ぼす影響、その機構を明らかにする基礎研究に尽力。21年に現部署へ配属されてからは、基礎研究の成果を活用し、新たな高圧水素用ステンレス鋼を開発しています」
――やりがいは。
「基礎研究から温めてきた開発が世の中に必要なものだと実感した時ですね。新たな高圧水素用ステンレス鋼は、将来お客さまからご要望が高まるであろう特性を情勢から予想し、性能向上を図ったものです。お客さまにニーズを伺った際、ご要望にとてもマッチしていることが分かりました。コツコツ研究してきて良かったなと。うれしく思いましたね。単に鉄を作るのではなく研究開発が社会貢献につながるかもしれない――という点にもやりがいを感じます」
――大変なことを。
「研究所で材料を試しに作る際に、間違えてある化学成分を多く投入するよう製造現場に要望したことがあります。現場の技術者の方が気付いてくださったので正しい投入量に修正できましたが、そのままだと爆発する状況だったと聞き、ヒヤリとしました。専門技術を持つ技術者など、多くの方に助けられています」
――現在の業務は。
「先ほどお伝えした高圧水素用ステンレス鋼の開発に加え、製鉄所の設備保全や製品保証に関する研究のうち、水素が関与するものも担当しています。製鉄所に直接行く機会もあり、これまで以上に製造現場との接点が増えましたね」
――管理職について。
「昨年4月から主任研究員になりました。まだ部下はいませんが、管理職としての心構えや部下との関わり方について研修で学ぶ機会を持つように。マネジメント能力を身に付けないといけないと感じるようになりました。今まで上司に自分の考えを尊重していただいてきたので、もし部下を持つ機会があれば同じように接したいです」
――女性比率は。
「日本製鉄の社員の女性比率は約10%と聞いたことがあるのですが、技術開発本部鉄鋼研究所は約20―30%なんです。社内の中でも割合が高く、女性が少ないと感じることはないですね」
――ライフイベントについて。
「2年前に結婚し共働きをしています。お互い仕事と家庭が両立しやすいよう、社内の福利厚生制度を利用して家事代行サービスを使っていますね。いずれ子供がほしいと思っていて、意向はすでに上司に伝えています。いつか出産の機会があったとしても、子育てと仕事を両立したいです」
――研究所で働く魅力を。
「大学院での研究と違って、研究をとりまく社会情勢などの外的要因、自社の強みといった内的要因を考慮して研究していく必要があります。組織内外のことを常に把握し、研究開発戦略を考え続ける必要があります」
――業界にどう変わってほしいか。
「一般論になってしまいますが、二酸化炭素排出削減を進めていくべきかと。環境対応を行うことで鉄が新しい価値を持つ、そこからいろんな価値観を持った方が業界に興味を持つ――という風につながっていけたらと思います。男女問わずさまざまな価値観を持った人が業界に増えてほしいですね」
――目標を。
「今後も水素エネルギーの普及拡大に貢献できる材料開発を行っていきます。製鉄所の設備保全や製品保証に関する研究でも過去の研究で培った知見を活用し、品質や信頼性の向上に寄与できればと思います」
(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。
――入社までを。
「お茶の水女子大学大学院の理学専攻物理科学コースで学んでいました。幼少期からナショナルジオグラフィックが好きで、地球科学やエネルギーシステムにずっと興味を持っていて。高校の時に、『地球科学を知りたいなら物理を学びなさい』と恩師に言われ今に至ります。院では、地球の中心の圧力である超高圧下の物性について研究していましたね」
――就職活動は。
「エネルギー関連で社会に貢献できる仕事がしたいと考えていました。中でも水素エネルギーが二酸化炭素を排出しない地球に優しい存在だと知り、関わりたいと思うように。日本製鉄は、就職活動を進める中で水素還元製鉄の開発に取り組んでいることから存在を知りました」
――その後を。
「日本製鉄が高圧水素用ステンレス鋼を開発・販売していると知り、より興味を持ちました。兵庫・尼崎にある研究開発センターの方が開発に関わっていると採用担当の方に教えていただき、お話を聞きたくて東京から訪問。研究開発に携わる方々の豊かな考え方に触れ、一緒に働きたいと思い入社を決めました」
――入社後は。
「技術系の同期は約350人で、うち女性は50人でした。7人に1人くらいの割合ですね。最初は技術開発本部鉄鋼研究所の水素エネルギー材料研究部に配属されました」
――業務内容を。
「これまで技術開発本部の中で2回、部署異動しています。一貫して水素環境下で使用される鋼材の研究開発を行ってきました。先ほどお話した研究部と18年に配属された先端技術研究所基盤メタラジー研究所では、鉄鋼材料の特性に水素が及ぼす影響、その機構を明らかにする基礎研究に尽力。21年に現部署へ配属されてからは、基礎研究の成果を活用し、新たな高圧水素用ステンレス鋼を開発しています」
――やりがいは。
「基礎研究から温めてきた開発が世の中に必要なものだと実感した時ですね。新たな高圧水素用ステンレス鋼は、将来お客さまからご要望が高まるであろう特性を情勢から予想し、性能向上を図ったものです。お客さまにニーズを伺った際、ご要望にとてもマッチしていることが分かりました。コツコツ研究してきて良かったなと。うれしく思いましたね。単に鉄を作るのではなく研究開発が社会貢献につながるかもしれない――という点にもやりがいを感じます」
――大変なことを。
「研究所で材料を試しに作る際に、間違えてある化学成分を多く投入するよう製造現場に要望したことがあります。現場の技術者の方が気付いてくださったので正しい投入量に修正できましたが、そのままだと爆発する状況だったと聞き、ヒヤリとしました。専門技術を持つ技術者など、多くの方に助けられています」
――現在の業務は。
「先ほどお伝えした高圧水素用ステンレス鋼の開発に加え、製鉄所の設備保全や製品保証に関する研究のうち、水素が関与するものも担当しています。製鉄所に直接行く機会もあり、これまで以上に製造現場との接点が増えましたね」
――管理職について。
「昨年4月から主任研究員になりました。まだ部下はいませんが、管理職としての心構えや部下との関わり方について研修で学ぶ機会を持つように。マネジメント能力を身に付けないといけないと感じるようになりました。今まで上司に自分の考えを尊重していただいてきたので、もし部下を持つ機会があれば同じように接したいです」
――女性比率は。
「日本製鉄の社員の女性比率は約10%と聞いたことがあるのですが、技術開発本部鉄鋼研究所は約20―30%なんです。社内の中でも割合が高く、女性が少ないと感じることはないですね」
――ライフイベントについて。
「2年前に結婚し共働きをしています。お互い仕事と家庭が両立しやすいよう、社内の福利厚生制度を利用して家事代行サービスを使っていますね。いずれ子供がほしいと思っていて、意向はすでに上司に伝えています。いつか出産の機会があったとしても、子育てと仕事を両立したいです」
――研究所で働く魅力を。
「大学院での研究と違って、研究をとりまく社会情勢などの外的要因、自社の強みといった内的要因を考慮して研究していく必要があります。組織内外のことを常に把握し、研究開発戦略を考え続ける必要があります」
――業界にどう変わってほしいか。
「一般論になってしまいますが、二酸化炭素排出削減を進めていくべきかと。環境対応を行うことで鉄が新しい価値を持つ、そこからいろんな価値観を持った方が業界に興味を持つ――という風につながっていけたらと思います。男女問わずさまざまな価値観を持った人が業界に増えてほしいですね」
――目標を。
「今後も水素エネルギーの普及拡大に貢献できる材料開発を行っていきます。製鉄所の設備保全や製品保証に関する研究でも過去の研究で培った知見を活用し、品質や信頼性の向上に寄与できればと思います」
(芦田 彩)
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