2023年11月30日

アジア最大級/サステナブル展示会/TASS2023台湾で開催/金属から廃水・汚泥まで/リサイクルに挑む台湾企業

台湾政府は本年、環境保護署を環境部に昇格させ、資源循環署を設けるなど循環経済(サーキュラーエコノミー、CE)の動きを加速させ、台湾の大手半導体企業などもCEを意識した取り組みを着実に進めている。台湾南部の中核都市、高雄市を中心とするエリアで活動する台湾永続供応協会(TASS)は、22日から24日にかけて高雄市の高雄展覧館で「産業横断」「多元性」「国際化」をテーマに掲げアジア最大級のサステナブル展示会「TASS2023」を開催した。

 今回は水素エネルギーもテーマに加えるなど、新たな試みもスタート。金属関連を含め、さまざまな企業が参加した。また、開会式では台湾の政府系金属研究機関である金属工業研究発展センターが台湾中油や国泰世華銀行とMOUを締結し、CE実現に向けた取り組みを推進している。

金属工業研究発展センター

独自開発したアルミスクラップのアップリサイクル技術を紹介した。6000系のアルミスクラップを回収し、方向性凝固純化技術を用いて溶解し、高純度な再生アルミに再資源化。自転車の部材などとして活用する例を示した。

台湾政府支援の下、同センターでは水素エネルギー関連の技術開発も進めている。ガスに水素を加えて効率的に燃焼できる技術を独自開発し、即応性が高い技術として注目を集めている。

水素燃料タンクに用いる耐高圧性を持ったステンレス製のパイプやバルブを、台湾・台中市にある金属製品メーカーの大甲永和機械工業と連携して開発に取り組んでいる。

それに伴い、カーボンを浸透させ、耐摩耗性、耐浸食性などの性能を高めた優れたステンレスの表面処理技術も開発。水素エネルギーの本格活用に向けて各種金属技術の開発を着実に進めている。

成信実業

半導体製造工程から排出されるシリコンやシリカなどのリサイクルを手掛ける。2022年には世界的な半導体パッケージング大手のASEと連携し、同社の製造工程から排出されるシリカのマテリアルリサイクルをスタートした。

現在では異業種との連携を強化し、シリカなどのリサイクル原料を塗料や建材、衣服の原料として再利用先を広げている。抗菌や脱臭などの機能もあり、再資源化以上の効果を発揮する。

2023年には台湾の大手半導体メーカーの半導体製造工程から発生する、シリコンやシリカが含まれた汚泥を専門処理する新工場を台湾西岸中央部の台中市に建設。汚泥は従来、埋め立てやセメント原料として廃棄処理されてきたため、リサイクル率向上に寄与する。12月から本格稼働を開始する予定だ。

亞気動力

燃料電池やエネファームなど環境に優しいエネルギーを取り扱い、持続可能なエネルギーシステムを台湾で供給している。現在は産業界向けの供給拡大を目指している。

2019年に設立し、社員数は30人。2023年11月に台湾の水素大手メーカー聯華林徳のグループとなり、水素燃料電池システムの台湾での普及を本格化している。

今回の出展ではトヨタ自動車のMIRAIで用いられている燃料電池を会場で披露。豊田通商と連携して、台湾での水素燃料電池の普及拡大を目指していく。

加雲連網

エネルギーシステムのソフトウェアを取り扱い、高い信頼性を持ったエネルギーシステムを台湾全土で展開しており、台湾トップシェアを誇る。

会社設立から7年が経過し、社員数は約100人。そのうち70%がエンジニアとなっている。同社の担当者は多くのエンジニアが在籍していることを背景に「高い技術力を有している」と自信を見せる。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電や蓄電した電力を仮想空間で管理。台湾電力の電力ニーズを適切に把握することで、台湾における再生可能エネルギー供給の最適化を担う。

永澧環境管理顧問

世界最大のサステナビリティや気候変動に関するコンサルティンググループ。本社は英国ロンドンにあり、世界中に展開している。創業から半世紀が経過したグローバル企業で日本にも拠点を持つ。

台湾でも再生可能エネルギーのプロジェクトや環境アセスメント、リスクマネジメントなどさまざまな事業に取り組んでいる。気候変動対応などにも力を入れており、幅広くコンサルティング業務に対応する。

台湾三資科技

廃油などを中心に廃棄物処理事業を手掛け、豊富な実績を有する。台湾では廃棄物処理を行うためにはライセンスが必要だが、同社では長年にわたり技術開発を手掛けてきており、さまざまな廃棄物処理に対応可能な技術力を保持している。

現在では開発してきた廃棄物の処理技術や設備を企業に販売し、生産工程内における資源循環への貢献を進めている。工程内で廃油の再利用を促進することで、廃棄物処理のライセンスが不要になり、簡便にリサイクルを行うことができるようになる。

再生処理を行った廃油は油として再び利用することはもちろんのこと、プラスチックの原料としても活用することができる。

忠興グループ

廃液や汚泥の処理などさまざまな事業を手掛ける。今回の展示会では中国・広州の企業が開発した廃液処理用の特殊フィルム「ランラン」を展示。同社は今年から中国企業の販売代理店を務め、台湾での普及を本格的に進めている。

特殊フィルムは電解技術を用いて廃水を処理し、不純物を除去することができる。リチウムイオン電池のリサイクル処理における前工程段階で活用することができる。中国で実用化された実績が豊富で、化合物やカーボンなどが含まれた製品のリサイクルが期待される。

また、薬剤で有機系汚泥処理を行う技術も展示。容量を7割削減することができる。汚泥を濃縮することでカロリーを高め、サーマルリサイクルにつなげることも可能だ。

行政院農業部

台湾における農業や畜産、林業などから発生する農業廃棄物などをリサイクルする取り組みを紹介。農業廃棄物から取り出したバクテリアを用いて工業用水を浄化する技術など、従来廃棄処理していた有機物を再利用する独自技術を開発した。

工業用途ではパイナップルの皮やカキ殻などの農業廃棄物を利用したグリーンで環境に優しいプラスチックを開発。農業系リサイクル材とポリマーの親和性を高め、日用品やLED基板などの電子製品にリサイクルする技術を披露した。

また、林業から発生するリグニンを再生して製品化し、二酸化炭素排出量を削減する技術なども注目を集めた。



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