鉄鋼業界で働く／女性現業職編／インタビュー（上）／製造の仕事がしたい！

住宅用換気部材メーカーのハウゼコ（本社＝大阪市中央区、神戸睦史社長）加西工場で、操業開始時から活躍する現業職の女性がいる。製造部5S改善推進室室長の岡本恵子さんだ。前職でものづくりに魅了され、ハウゼコに転職。タレパンや組み立てなどさまざまな業務を経験した。転職活動やこれまでの業務内容を聞いた。

――入社までは。

「今までに掃除機や炊飯器の組み立て、スーパーの夜間レジ、運送会社社員などさまざまな仕事を経験しました。その中で組み立ては、何種類もの配線を組み立てる作業が思った以上に楽しくて。未経験の私ができることにもうれしさを覚えました。『ものづくりの仕事がもっとしたい、製造業に挑戦したい』と思っていたところ、ちょうど加西工場の新規立ち上げに伴う社員募集があり、家から近いこともあって応募しました」

――製造業に興味が。

「今まで事務しかしたことがなかったので、組み立ての仕事をするまで自分には無理だと思っていたんです。でもいざ働いてみて、製造業って私に合っているんだ！と。自分の手先が器用だという気付きもありました」

――面接は。

「女性でも現場作業の社員になれるのか電話で問い合わせたところ、『現場に女性社員は現状いない』との返答が。とりあえず面接に行ってみようと決めました。面接では、『現場はリフトやクレーンがあるし、夜勤もあるけど大丈夫？』とさまざまな質問を受けました。クレーンの操作経験はないけれど、リフトの免許は取得済み。以前も工場で働いていましたし夜勤経験者なので、全部大丈夫ですと答えるとすごく驚かれたのを覚えています。現場も見学しましたが、ギャップがなく問題ないなと感じましたね。その旨を伝えるとさらに驚かれました（笑）」

――準社員で入社。

「2008年10月に準社員で入社、4カ月後に正社員登用されました。機械作業を希望していましたが、最初は梱包作業からのスタートでしたね。下積みとして何カ月か従事したのち、事務所業務へ異動。欠員補充に伴い再び梱包担当になり、タレパン、製品の組み立てとなりました。タレパンと組み立て、双方のリーダーをしながら作業する時期もありましたね。ジャンルの違う作業の同時並行は大変でした。その後はチーム全体を見守る西棟リーダーを2月まで務めました」

――現在は。

「5S改善推進室という新部署が発足し、室長に就任しました。自ら提案をし、周囲とコミュニケーションを取りながら5S活動に取り組んでいます。また他拠点に水平展開もしています。自分たちが働く工場で、自分たちのために5S活動をするのが楽しいです！。 『楽になった、ありがとう』と感謝された時、目に見える効果があった時、達成感とともにうれしくなりますね。各リーダーと協力しながら取り組んでいます。現在は、タスク・進ちょく管理を効率的に行う生産現場の仕組み作りとその定着にも奮闘しています」

――現場にも顔を出す。

「作業に直接携わっていないのですが、見回りをして補助やアドバイスをしています。社員の多能工化が進み、作業する機会は減ってしまいました」

――驚いたことを。

「何も知らずに鉄鋼業界に入ったので、『コイルが入荷されるまでこんなに時間が掛かるんだ』『こうやって切った鋼板が搬入されるんだ』と驚きました」

――やりがいは。

「タレパンの機械が面白いなと思いました。自分が編集したデータ通りに加工できますし、小ロットでも段取り良く作業すれば生産効率が上がってうれしくなります」

――効率を重視。

「組み立てが追いつかない時に、どうすれば速くできるか考えながら作業していました。こう置けば組み立てが速く進むのではないか、道具の並び方を変えたら効率が上がるのではないか――と。当時は女性が私の他に2人いたのですが、ともに家庭に事情がある方々。彼女たちに負担を掛けたくないという気持ちがありました。彼女たちも私に負担を掛けたくないと思っていて……。このようにお互いを思いやる考えが5S改善推進室の業務にも役立っていますね」

――リーダーになってからは。

「リーダーになっても自分がやって見せようと思っていて、作業や片付けを率先して行っていました。『あの人がやってくれる』という雰囲気になって誰も片付けなくなってしまい、新たな課題が生まれてしまったのですが……。それでもまずは、言われたことを自分からコツコツと確実にこなすのが重要だなと。作業のやりやすさなど、部下からの業務に関する意見もしっかり聞くようにしています」

――部下は男性が多い。

「女性リーダーというだけで、メンタルが強くて怖い“鋼鉄の女"と一部から思われていて（笑）。何気ない話をしたら、こんなに気さくな人なの!? と驚かれて打ち解けたことがありました（笑）。『岡本さんは昔からすごく頑張っている、皆知っているよ』と周囲に話してくれる部下、『岡本さんはボスだから話したいことがある』と相談してくれる部下もいてうれしく感じます」

（芦田 彩）





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