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2024.12.20
2023年6月27日
商社の経営戦略/2030年以降を見据えて/神鋼商事 森地高文社長/事業投資 案件積み上げ/経常利益150億円を安定確保
――2023年3月期は連結経常利益が127億円となり、前期の97億円を上回り、最高益を更新した。
「主原料価格や鋼材価格の上昇が追い風となった。鉄鋼は自動車減産の影響で取扱量が減少したものの鋼材価格の上昇、持分法適用会社や出資先の業績が好調に推移し、前期の41億円から51億円に増加した。鉄鋼原料は7億円から15億円、機械・情報が16億円から22億円、溶材も3億円から8億円にそれぞれ増加した。非鉄金属は、中国における自動車向けアルミ板材の取扱量が増加するなどグループ会社は堅調だったが、伸銅品の取り扱い減などで単体が減益となり、30億円から27億円に後退した」
――前期は一過性要因を除いた実力利益を80億円程度と分析していた。
「想定していた為替レートが円安に振れたことによる影響と機械系子会社による増益や不動産の売却など一過性のプラス要因が約20億円あり、実力は100億円強と見ている」
――純利益も92億円となり前期の71億円を上回り最高益となった。
「前回予想の88億円からも上振れた。目標配当性向30%に則って期末配当を一株当たり150円から165円に修正し、年間配当予想を前期の245円から315円に引き上げた」
――今期は経常利益が100億円の減益予想。
「主力の鉄鋼、非鉄金属は自動車生産の影響が大きい。前期は北中米、中国で日系自動車メーカーの生産が大幅に落ち込んだ。今期も急激な回復は見込めず、微増にとどまる見通し。また非鉄金属の業績を左右する半導体需要は、4年ぶりのマイナス成長が予測されている。前期にあった不動産売却益の反動減があり、コロナ禍収束を受けて営業活動を活発化させるため販管費も増加するが、100億円台の利益を維持する」
――セグメント別は。
「鉄鋼44億円、非鉄金属22億円、機械・情報13億円、溶材6億円とそれぞれ減益予想で、鉄鋼原料は15億円で横ばい。為替は1ドル130円と想定。鉄鋼は前下期並みの鋼材価格を維持するが、神戸製鋼所の厚板ミル改修による10万トン程度の影響を織り込んでいる。非鉄金属は国内子会社の減益、機械・情報は国内子会社の取り扱い減少、溶材も取り扱い減少を想定。予算を策定した春先と比較すると、半導体の調整局面が長引く一方、国内の自動車生産回復が前倒しされ、為替も円安に振れており、プラス・マイナス要因が相殺しあう状況にある」
――中期経営計画(21―23年度)は最終年度を迎えた。
「最終年度目標は経常利益95億円以上、ROE9%以上、ROA3%以上、自己資本比率20%以上、DEレシオ1・0程度。前期実績がROE13・6%、ROA3・3%、DEレシオ0・9で経常利益とともに目標を達成している。自己資本比率は18・3%と未達で、次期中計の継続課題となる」
――定性面では「収益力の強化」、「投資の促進」、「商社機能の強化」の三つのテーマを掲げている。
「経営環境が変化する中で、企業として発展を続けるには収益力強化が不可欠。商社機能を高めつつ、ポートフォリオを組み替えていくには、事業投資を加速する必要がある。DX・IT関連投資38億円を含め、中計3年間で200億円の投融資を計画しているが、コロナ禍もあって遅れており、案件の積み上げが大きな課題となっている」
――2年間の投資実績を。
「21年度は20億円。米国の線材2次加工メーカー、GBPとAWPの設備増強、中国のアルミコイルセンター、蘇州神商金属のEV対応設備増強を実施。中国の半導体関連装置メーカーを買収して、神商精密機材(揚州)を設立。国内では溶材関連子会社のエスシーウェルが溶接資機材販売事業を譲受した。22年度は48億円の投資を計画していたが30億円にとどまった。韓国の大昌鍛造と合弁でチェンナイに新設したトラック・デザイン・インディアは、熱処理・最終加工を本年下期に開始する予定。アルミ厚板切断加工会社、KTNベトナムは本年3月に稼働を開始した」
――本年度の投資は。
「88億円の計画。非鉄金属は、自動車用アルミパネルのリサイクル事業を本格化し、国内の流通再編について複数の買収案件を検討している。鉄鋼原料はバイオマス燃料のスケールアップ、鉄鋼は米国線材加工会社の設備投資を進める。このままでは3年間の投資累計額が176億円にとどまる。意思決定は来年度にずれ込んでも構わないので、持続的成長につながる案件を積み上げていく」
――KTNベトナムについて。
「神商メタルズの韓国子会社で、アルミ厚板の切断加工を行うKTNのグローバル展開。KTNは、高い品質競争力を持つ神戸製鋼所のアルミ厚板を韓国の半導体分野などに供給している。需要家である韓国系財閥企業がベトナム北部で大型投資を積極展開しており、液晶・半導体向けのアルミ厚板需要が増加していることから、同国北部に切断加工拠点を新設した。ベトナムでは、神戸製鋼所の銅板加工事業をサポートするためハノイに駐在員を配置しており、現地の非鉄関連需要を併せて捕捉していく。東南アジアではマレーシアにおける半導体や電子・電機産業の投資が続いている。マレーシアはカントリーリスクが低く、英語圏でもあり、ベトナムに続く事業展開を検討している」
――鉄鋼本部の投資は。
「米国の線材2次加工拠点の設備投資を継続しているが、残念ながら新規の投資案件が動き出さない。メキシコは加工事業から撤退し、米国からの線材2次加工製品のトレードを続けているが、市場変動に事業環境の厳しさが加わり、再投資というステージには来ていない」
――中計では「資源循環型ビジネス」、「EV・自動車軽量化」を共通テーマに掲げている。資源循環型へのアプローチから。
「鉄スクラップは中計で年間150万トン規模への拡大を目指している。足下は国内外70―80万トンなので、発生国である日本、北米での安定調達先、国内、ASEANでの安定販売先の拡大に向けてのローラー作戦を広げていく。自動車用アルミのクローズドループ、バイオマス燃料トレード、溶接材料スプールのリサイクルなども推進している」
――アルミのリサイクル事業について。
「アルミパネルを納入した自動車メーカー、部品メーカーからのリターンスクラップを分別・回収して付加価値を高めるビジネスモデル。コスト低減、カーボンニュートラルなどの観点からニーズが急速に高まっており、サッシも含めてリサイクル事業を拡大していく。関東圏にある集荷拠点にドイツ製設備を導入して操業を開始した。ノウハウの蓄積を急ぎ、自動車のアルミ化が先行する中国などへ横展開していきたい」
――バイオマス燃料は。
「国内3カ所のバイオマス発電所と長期の燃料供給契約を締結しており、木質ペレットの納入も開始した。22年度の実績はPKSが約10万トン、木質ペレット1万トンで、本年度はそれぞれ29万トン、6万トンに増やす計画。PKSはインドネシア、マレーシア、木質ペレットはベトナムから調達しており、安定調達先の拡充を急ぎ、まずは年間50万トン規模への拡大を目指す。電力原燃料の輸送にも強みを持つ旭海運との連携を強化し、輸送コストを安定させながら収益源として育成していく」
――「EV・自動車軽量化」について。
「鉄鋼は純鉄系軟磁性材料、アルミボルト、非鉄金属はアルミパネル、ヒートシンク、リードフレームなどの軽量化に関連する材料を拡販していく」
――軟磁性材料とは。
「神戸製鋼所が開発した商品で優れた磁気特性を持つ。トランスミッション、サスペンション、燃料供給調整弁、クラッチなど電磁部品の制御機能の向上、小型・軽量化、消費電力の低減などの効果が確認され、採用が広がっている。鉛フリーで切削加工性を改善し、電磁部品の生産性を大幅に向上させている。鉄鋼本部は自動車軽量化ニーズに対応するボルトのアルミ化のアプローチも本格化している」
――アルミパネルの取り組みは。
「EV生産が急拡大し、ボディのアルミ化が先行する中国において、神戸製鋼所の神鋼汽車鋁材(天津)などからアルミコイルを調達して、アルミコイルセンターの蘇州神商金属がボンネットやルーフ向けの切断・加工を行っている。追加の設備増強を迫られており、新立地も検討していたが、中国の景気動向を見ながら慎重に判断したいと考えている」
――米国もEV化が加速する。
「アルミパネルのビジネスはないが、ケンタッキー州でアルミ鍛造・押出品を製造する神戸製鋼所のKAAP・KPEXとのビジネスチャンスを探っている」
――機械事業は。
「神戸製鋼所がバイオマスタービン、冷凍機、ヒートポンプなどESG関連の商品ラインナップを拡充しており、グループ中核商社として営業活動をグローバル展開している。神戸製鋼所が保有する直接還元鉄プロセス関連ビジネスにも再度、挑戦したいと考えている」
――東証はプライム上場企業についてPBR1倍を指標に掲げているが、23年3月期末は約0・7倍だった。
「23年3月期末は純資産が前期末の637億円から738億円に増加し、一株当たり純資産は7107円から8235円に増加した。PBR1倍を実現する株価は8000円台。その株価は新型コロナウイルス感染症が広がった20年4月の1500円前後が直近の底値で、本年は最安値が1月の5000円、最高値が3月の6400円で、3月末は5800円だった。商社として成長投資を実行し、利益率を引き上げながら、高水準の安定配当を継続できる将来展望を示し、市場の評価を得ていく必要がある」
――2030年以降を見据えた、次期中計の課題と展望を。
「社長就任当初から収益性の低さを指摘し、主力のトレード拡充と併行して事業会社の利益拡大に注力してきた。現中計では『明日のものづくりを支え社会に貢献する会社』をキーワードに『収益力の強化』を図る全体戦略を打ち出し、役員・社員のベクトルを合わせることに重きを置いて、取り組んできた。コロナ禍が続く中、2年連続で最高益を更新するなど収益は着実に拡大しているが、いわば盆と正月が一緒に来たような強い追い風に乗った結果。他商社を見回しても、伸びる余地はまだまだある。新規の成長戦略投資を続け、事業利益を積み上げていかなければならない」
――目指す収益水準は。
「経営環境が厳しい状況でも経常利益100億円を確保し、安定して150億円規模の利益を計上、環境が良ければ200億円を狙える体制にはもっていきたい」
――新たな取り組みを重ねている。
「21年6月に立ち上げた全社横断プロジェクトチームは、経営企画部長をリーダーとして、専任2人と5本部からの選抜兼務者を含む総勢約10人で、M&A、スタートアップ企業への投資を含めた新規ビジネスの創出に取り組んでいる。役員は視野を広げるため、非鉄本部長が鉄鋼本部、機械・情報本部長が原料本部と経営企画部、本社部門担当役員が溶材本部をそれぞれ管掌する体制を継続。社員についても本年4月から本部、組織を越える人事異動をスタートした。一定期間で組織を超えて異動し、海外赴任、事業会社への出向などを通じてキャリア、スキルを発揮し、刺激を受けながらモチベーションを高めてもらう。ダイバーシティを含めた新たな人材戦略も通じて、組織風土、企業風土を変化させつつ、長期ビジョンを見定めて、次期中計で取り組むテーマを抽出していく」(谷藤 真澄)
「主原料価格や鋼材価格の上昇が追い風となった。鉄鋼は自動車減産の影響で取扱量が減少したものの鋼材価格の上昇、持分法適用会社や出資先の業績が好調に推移し、前期の41億円から51億円に増加した。鉄鋼原料は7億円から15億円、機械・情報が16億円から22億円、溶材も3億円から8億円にそれぞれ増加した。非鉄金属は、中国における自動車向けアルミ板材の取扱量が増加するなどグループ会社は堅調だったが、伸銅品の取り扱い減などで単体が減益となり、30億円から27億円に後退した」
――前期は一過性要因を除いた実力利益を80億円程度と分析していた。
「想定していた為替レートが円安に振れたことによる影響と機械系子会社による増益や不動産の売却など一過性のプラス要因が約20億円あり、実力は100億円強と見ている」
――純利益も92億円となり前期の71億円を上回り最高益となった。
「前回予想の88億円からも上振れた。目標配当性向30%に則って期末配当を一株当たり150円から165円に修正し、年間配当予想を前期の245円から315円に引き上げた」
――今期は経常利益が100億円の減益予想。
「主力の鉄鋼、非鉄金属は自動車生産の影響が大きい。前期は北中米、中国で日系自動車メーカーの生産が大幅に落ち込んだ。今期も急激な回復は見込めず、微増にとどまる見通し。また非鉄金属の業績を左右する半導体需要は、4年ぶりのマイナス成長が予測されている。前期にあった不動産売却益の反動減があり、コロナ禍収束を受けて営業活動を活発化させるため販管費も増加するが、100億円台の利益を維持する」
――セグメント別は。
「鉄鋼44億円、非鉄金属22億円、機械・情報13億円、溶材6億円とそれぞれ減益予想で、鉄鋼原料は15億円で横ばい。為替は1ドル130円と想定。鉄鋼は前下期並みの鋼材価格を維持するが、神戸製鋼所の厚板ミル改修による10万トン程度の影響を織り込んでいる。非鉄金属は国内子会社の減益、機械・情報は国内子会社の取り扱い減少、溶材も取り扱い減少を想定。予算を策定した春先と比較すると、半導体の調整局面が長引く一方、国内の自動車生産回復が前倒しされ、為替も円安に振れており、プラス・マイナス要因が相殺しあう状況にある」
――中期経営計画(21―23年度)は最終年度を迎えた。
「最終年度目標は経常利益95億円以上、ROE9%以上、ROA3%以上、自己資本比率20%以上、DEレシオ1・0程度。前期実績がROE13・6%、ROA3・3%、DEレシオ0・9で経常利益とともに目標を達成している。自己資本比率は18・3%と未達で、次期中計の継続課題となる」
――定性面では「収益力の強化」、「投資の促進」、「商社機能の強化」の三つのテーマを掲げている。
「経営環境が変化する中で、企業として発展を続けるには収益力強化が不可欠。商社機能を高めつつ、ポートフォリオを組み替えていくには、事業投資を加速する必要がある。DX・IT関連投資38億円を含め、中計3年間で200億円の投融資を計画しているが、コロナ禍もあって遅れており、案件の積み上げが大きな課題となっている」
――2年間の投資実績を。
「21年度は20億円。米国の線材2次加工メーカー、GBPとAWPの設備増強、中国のアルミコイルセンター、蘇州神商金属のEV対応設備増強を実施。中国の半導体関連装置メーカーを買収して、神商精密機材(揚州)を設立。国内では溶材関連子会社のエスシーウェルが溶接資機材販売事業を譲受した。22年度は48億円の投資を計画していたが30億円にとどまった。韓国の大昌鍛造と合弁でチェンナイに新設したトラック・デザイン・インディアは、熱処理・最終加工を本年下期に開始する予定。アルミ厚板切断加工会社、KTNベトナムは本年3月に稼働を開始した」
――本年度の投資は。
「88億円の計画。非鉄金属は、自動車用アルミパネルのリサイクル事業を本格化し、国内の流通再編について複数の買収案件を検討している。鉄鋼原料はバイオマス燃料のスケールアップ、鉄鋼は米国線材加工会社の設備投資を進める。このままでは3年間の投資累計額が176億円にとどまる。意思決定は来年度にずれ込んでも構わないので、持続的成長につながる案件を積み上げていく」
――KTNベトナムについて。
「神商メタルズの韓国子会社で、アルミ厚板の切断加工を行うKTNのグローバル展開。KTNは、高い品質競争力を持つ神戸製鋼所のアルミ厚板を韓国の半導体分野などに供給している。需要家である韓国系財閥企業がベトナム北部で大型投資を積極展開しており、液晶・半導体向けのアルミ厚板需要が増加していることから、同国北部に切断加工拠点を新設した。ベトナムでは、神戸製鋼所の銅板加工事業をサポートするためハノイに駐在員を配置しており、現地の非鉄関連需要を併せて捕捉していく。東南アジアではマレーシアにおける半導体や電子・電機産業の投資が続いている。マレーシアはカントリーリスクが低く、英語圏でもあり、ベトナムに続く事業展開を検討している」
――鉄鋼本部の投資は。
「米国の線材2次加工拠点の設備投資を継続しているが、残念ながら新規の投資案件が動き出さない。メキシコは加工事業から撤退し、米国からの線材2次加工製品のトレードを続けているが、市場変動に事業環境の厳しさが加わり、再投資というステージには来ていない」
――中計では「資源循環型ビジネス」、「EV・自動車軽量化」を共通テーマに掲げている。資源循環型へのアプローチから。
「鉄スクラップは中計で年間150万トン規模への拡大を目指している。足下は国内外70―80万トンなので、発生国である日本、北米での安定調達先、国内、ASEANでの安定販売先の拡大に向けてのローラー作戦を広げていく。自動車用アルミのクローズドループ、バイオマス燃料トレード、溶接材料スプールのリサイクルなども推進している」
――アルミのリサイクル事業について。
「アルミパネルを納入した自動車メーカー、部品メーカーからのリターンスクラップを分別・回収して付加価値を高めるビジネスモデル。コスト低減、カーボンニュートラルなどの観点からニーズが急速に高まっており、サッシも含めてリサイクル事業を拡大していく。関東圏にある集荷拠点にドイツ製設備を導入して操業を開始した。ノウハウの蓄積を急ぎ、自動車のアルミ化が先行する中国などへ横展開していきたい」
――バイオマス燃料は。
「国内3カ所のバイオマス発電所と長期の燃料供給契約を締結しており、木質ペレットの納入も開始した。22年度の実績はPKSが約10万トン、木質ペレット1万トンで、本年度はそれぞれ29万トン、6万トンに増やす計画。PKSはインドネシア、マレーシア、木質ペレットはベトナムから調達しており、安定調達先の拡充を急ぎ、まずは年間50万トン規模への拡大を目指す。電力原燃料の輸送にも強みを持つ旭海運との連携を強化し、輸送コストを安定させながら収益源として育成していく」
――「EV・自動車軽量化」について。
「鉄鋼は純鉄系軟磁性材料、アルミボルト、非鉄金属はアルミパネル、ヒートシンク、リードフレームなどの軽量化に関連する材料を拡販していく」
――軟磁性材料とは。
「神戸製鋼所が開発した商品で優れた磁気特性を持つ。トランスミッション、サスペンション、燃料供給調整弁、クラッチなど電磁部品の制御機能の向上、小型・軽量化、消費電力の低減などの効果が確認され、採用が広がっている。鉛フリーで切削加工性を改善し、電磁部品の生産性を大幅に向上させている。鉄鋼本部は自動車軽量化ニーズに対応するボルトのアルミ化のアプローチも本格化している」
――アルミパネルの取り組みは。
「EV生産が急拡大し、ボディのアルミ化が先行する中国において、神戸製鋼所の神鋼汽車鋁材(天津)などからアルミコイルを調達して、アルミコイルセンターの蘇州神商金属がボンネットやルーフ向けの切断・加工を行っている。追加の設備増強を迫られており、新立地も検討していたが、中国の景気動向を見ながら慎重に判断したいと考えている」
――米国もEV化が加速する。
「アルミパネルのビジネスはないが、ケンタッキー州でアルミ鍛造・押出品を製造する神戸製鋼所のKAAP・KPEXとのビジネスチャンスを探っている」
――機械事業は。
「神戸製鋼所がバイオマスタービン、冷凍機、ヒートポンプなどESG関連の商品ラインナップを拡充しており、グループ中核商社として営業活動をグローバル展開している。神戸製鋼所が保有する直接還元鉄プロセス関連ビジネスにも再度、挑戦したいと考えている」
――東証はプライム上場企業についてPBR1倍を指標に掲げているが、23年3月期末は約0・7倍だった。
「23年3月期末は純資産が前期末の637億円から738億円に増加し、一株当たり純資産は7107円から8235円に増加した。PBR1倍を実現する株価は8000円台。その株価は新型コロナウイルス感染症が広がった20年4月の1500円前後が直近の底値で、本年は最安値が1月の5000円、最高値が3月の6400円で、3月末は5800円だった。商社として成長投資を実行し、利益率を引き上げながら、高水準の安定配当を継続できる将来展望を示し、市場の評価を得ていく必要がある」
――2030年以降を見据えた、次期中計の課題と展望を。
「社長就任当初から収益性の低さを指摘し、主力のトレード拡充と併行して事業会社の利益拡大に注力してきた。現中計では『明日のものづくりを支え社会に貢献する会社』をキーワードに『収益力の強化』を図る全体戦略を打ち出し、役員・社員のベクトルを合わせることに重きを置いて、取り組んできた。コロナ禍が続く中、2年連続で最高益を更新するなど収益は着実に拡大しているが、いわば盆と正月が一緒に来たような強い追い風に乗った結果。他商社を見回しても、伸びる余地はまだまだある。新規の成長戦略投資を続け、事業利益を積み上げていかなければならない」
――目指す収益水準は。
「経営環境が厳しい状況でも経常利益100億円を確保し、安定して150億円規模の利益を計上、環境が良ければ200億円を狙える体制にはもっていきたい」
――新たな取り組みを重ねている。
「21年6月に立ち上げた全社横断プロジェクトチームは、経営企画部長をリーダーとして、専任2人と5本部からの選抜兼務者を含む総勢約10人で、M&A、スタートアップ企業への投資を含めた新規ビジネスの創出に取り組んでいる。役員は視野を広げるため、非鉄本部長が鉄鋼本部、機械・情報本部長が原料本部と経営企画部、本社部門担当役員が溶材本部をそれぞれ管掌する体制を継続。社員についても本年4月から本部、組織を越える人事異動をスタートした。一定期間で組織を超えて異動し、海外赴任、事業会社への出向などを通じてキャリア、スキルを発揮し、刺激を受けながらモチベーションを高めてもらう。ダイバーシティを含めた新たな人材戦略も通じて、組織風土、企業風土を変化させつつ、長期ビジョンを見定めて、次期中計で取り組むテーマを抽出していく」(谷藤 真澄)
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