英資源大手のリオティントは3Dプリンター用金属チタン粉末の開発を推進する。世界最大の酸化チタン原料サプライヤーという立ち位置を生かし、一般産業向けで市場成長が見込まれる3Dプリンターでのチタン需要を捕捉する考え。本年中にカナダの研究拠点で1トン規模のパイロットプラントを立ち上げ、コストなどを検証する。軌道に乗れば生産能力を100倍に引き上げ、量産化の検証に移る計画だ。
チタン事業を管掌するリオティント・アイアン・アンド・チタニウム(RTIT)のディディエ・アーセグール技術部門副社長が13日、都内で産業新聞社などの取材に応じ、3Dプリンター用のチタン粉末は「一般産業向けで業界を変えるゲームチェンジャーになり得る」と意気込みを語った。
同社は酸化チタン原料サプライヤーとして酸化チタン含有率を95%まで高めたアップ・グレード・スラグ(UGS)などを金属チタンおよび酸化チタンメーカーに供給する。さらにチタン事業のポートフォリオへ金属チタンを加える方針。成長分野とされる3Dプリンター用金属チタン粉末の商業化を目指している。
現在、開発中の金属チタン粉末製造技術は有害な化学物質を使用せず、温室効果ガスも直接排出しない。カナダ政府の支援を受けて推進中だ。形状はインゴットではなくあくまで粉末のため、従来のクロール法(マグネシウム還元法)とも異なるという。メリットにクロール法より製造プロセスが短いと説明している。
技術的な課題は商業化規模へのスケールアップだ。新技術による製造法のため、いかに研究レベルの規模からサイズアップするかが重要と強調。アーセグール副社長は「ビジョンは大きく、着手は小さいところから確実に行う」と述べ、商業生産に向けた技術の確立に意欲を示した。
同社は2021年に3Dプリンター向け鉄粉末を開発し、現在、用途拡大に取り組んでいる。これに加え、軽さや強度など優れた特性を有するチタンのラインアップを推進。産業向けで広く使用されるチタンは3Dプリンターに適した材料とみている。
チタンを30%程度含む原料のイルメナイト鉱石からUGSなどに純度を高める製錬工程でも、温室効果ガスの排出を95%削減できる「ブルースメルティング」技術の開発を進める。カナダ・ケベック州の工場で今月、年間4万トンの鉱石を処理できるブルースメルティングの実証プラントが稼働を開始。25年までにデータ分析やコスト試算などを行い、商業化の判断を行う。