2023年4月6日
日本の特殊鋼/世界に誇る技術の粋/37/流通座談会/中
――ここからは製品ではなく特殊鋼流通業界についてお聞きしたい。業界再編が少ないように感じる。
碓井「メーカーに比べて流通の再編が活発でない背景には、ここにいる全特協のメンバーがそうであるように、大半がオーナーだからという点に尽きる。創業者から子ども、そして孫と本業本位を代々引き継いでいることが経営の安定につながっている。もう一つ、なぜ生き残ることができたか、これは安定的に利益を生み出し続けてそれを大事にしているから。われわれの扱う特殊鋼はこれまで、他の一般鋼材に比べ市況が短期間に乱高下しにくく、好不況の波はあれど比較的に需要も総じて安定し、顧客と国内外経済の機械産業の発展とともに伸びてきた。特殊鋼の世界は普通鋼に比べ独特な点もある。普通鋼は高炉品と電炉品など国内メーカー間の価格差に加えて、安価な海外材の流入などの問題がある。一方で特殊鋼は鋼種にもよるが、高炉・電炉間の価格差は普通鋼ほどではない、特殊鋼以外の業界からすると『安定している』と見えるのではないか。ただ、足元の販売価格の大幅な値上げは、『山高ければ谷深し』で先行き不透明感に不安を感じるのが正直なところだ」
櫨「特殊鋼流通が生き残っている理由は最大需要家の自動車産業と発展をともにしてきたことも付け加えたい。右肩上がりで生産量が増え、サプライチェーンを担うわれわれもこの動きに乗っかってきた。並行して顧客にとって便利な機能が、われわれの成長につながった。鋼材を右から左に流すような取引から、自社で在庫し、即納体制を敷いたり切断したり、機械加工や熱処理まで…と、きめ細かくお客さまの要望を受け止め、全てクリアしてきて成長し、今日に至っている」
松岳「さまざまな要求に応えてきた努力に加えてニッチで新規参入がない世界である点も大きい」
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