塩ビライニング鋼管や都市ガス用バルブなどを製造販売する協成(本社=大阪市西区、冨川清社長)では、営業本部海外営業部の丸山千尋さんが総合職採用で2019年に入社。社内で唯一の女性営業職として、塩ビライニング鋼管の輸出などに携わっている。会社説明会で入社への思いが強くなったという丸山さんに、これまでの経緯や現在の業務内容などについて聞いた。
――入社の経緯を。
「大学でアメリカ文学を専攻していました。京都という土地柄もあり、外国人観光客に駅でホームの場所を聞かれるなど、英語を使う機会があったんです。英語を通してコミュニケーションを取れたのがうれしくて、英語を使う仕事に就けたらいいな、と何となく感じるようになりました」
――就職活動は。
「営業志望で、人の生活になくてはならないものに携わりたくて、自社でインフラ向け製品の製造販売をしている会社に焦点を絞って就活を進めました。なので最初は鉄鋼業界そのものに興味があったわけではないんです。ブレーカー機器や水栓金具など、さまざまなものづくりをしている会社を受けており、その中の1社が協成でした。会社説明会に行くと、採用担当者に加え、営業本部の方が詳しく丁寧に1日の業務内容を教えてくださり、『この方々と一緒に働きたいな』と感じましたね」
――入社後は。
「就活当時の社長が、世情に合わせて女性の社員数を増やす方針を掲げていたそうで、同期の総合職は私を含め5人中2人が女性でした。一般職も含めると4人で、同期の半分以上が女性なんです。会社情報を調べていてもともと女性比率が少ないとは感じていましたが、いざ入社すると女性営業職は私だけ。女子大に通っていたので、男性ばかりなのは当初不安でしたね。配属当初は上司が、女性部下への対応が分からず距離を置いているのを感じ、自分自身も1―2カ月は猫を被っていました。でも、もともと私は男っぽい性格だと感じる節があったので(笑)、自分からなれなれしくいこうと決めました。他部署も含めて、おじけずにぐいぐいと自分から話しかけることを心がけ、今では『なれなれしいね』と周囲にいじってもらえるまでになっています(笑)」
――現在の業務は。
「1年目から台湾輸出の営業担当をしています。取り扱っているのは自社製品の塩ビライニング鋼管と、他社製品の継手や配管副資材などですね。輸出品は主に高層マンションの都市ガス配管に使用されています。日本のマンションは玄関ドア付近にガスメーターボックスがあり、パイプシャフト内に配管されるのですが、台湾の場合はベランダ付近の屋外に配管されます。さびたら大変ですよね。現地メーカーの白ガス管と比較して高額ではありますが、屋外でも安心して使用できる協成の製品を使用していただいています。日本のものづくりに関わる身として、うれしいですね」
――大変なことを。
「台湾の取引先とは、パイプの径のサイズを『15A』『20A』などとA呼称で呼ぶのですが、仕入れ先の方々の間ではA呼称に加え、『1/2B』などのインチ表示を使われることも多いです。入社時は電話で後者の呼び方を聞き、混乱してしまいました。理解できるようになりたくて、仕入れ先の方々からサイズの別名を教えてもらい、表にしてデスクマットに挟んでいます。電話が掛かってきてもいつでもどのサイズの話かすぐ分かるようにしていますね」
――印象的な業務は。
「台湾のお客さまは良くも悪くもおおらかで、細かい在庫管理が苦手なようです。在庫がないことに気付かれてから、至急の納期で注文をいただくことがこれまでに時々ありました。急いでと言われても、材料のパイプを発注し、工場で被覆工程を行い輸出するにはそれなりの時間が掛かります。社内ではよくあることとして受け止められていたようでしたが、この状況を打開できないか? と思い、お客さまに在庫状況と受注残を毎月報告していただくよう依頼しました。それを見て、欠品しそうなものは『絶対に足りなくなるので買ってください!』とお願いし、早めに発注していただけるよう働きかけました。1年半ほど続け、お客さまも慣れてくださり、安定した在庫管理と供給体制を実現することができました」
――ユーザーとの距離も縮まった。
「新型コロナウイルス感染拡大前にお客さまが来日された際、富士山など各地を案内しました。空き時間ができた際に『娘へプレゼントを買いたい』とのご要望があり、一緒に百貨店へ。店内で娘さんの代わりに私がさまざまなバッグを手に持ち、その様子をお客さまと娘さんがLINEのビデオ通話で中継。娘さんが欲しいプレゼント探しのお手伝いをしました。お客さまとの距離がとても近くなったように感じますし、女性営業職だからできたことかも?と思っています。対応を気に入っていただけたのか、その後注文が増えました!」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。