JFE建材で、初の女性部長職である浜原京子さんが、ホーロー・表面処理技術部長として日々業務にあたっている。1982年に川崎製鉄(現JFEスチール)に入社後、子育てをしながら缶用鋼板や自動車用鋼板に関する研究を続けてきた。現在の業務、女性としての働き方や思い、鉄鋼業界について考えることなどを聞いた。
――その後は。
「2005年にJFE建材に異動しました。ホーロー・表面処理技術部で、ホーローや塗装、めっき、腐食に関する開発や調査を行っています。学校の黒板や道路、土木、フェンス、建築商品などに使われていますね」
――印象に残る業務を。
「ガードレールの取り付けボルトの頭部分に再帰反射塗装を施した開発です。夜運転する時、自動車のライトを付けますよね。この塗装は、照らしている部分だけに反射し、周囲の人などあちこちに光が飛ばないようになっているんです。夜間でも運転手が道の先にあるガードレールの位置を確認することができて、安全につながっています」
――現在部長を務められています。
「JFE建材への異動から数年で室長が定年退職され、役員が部長を兼務される形となりました。管理職が実質ほぼいないような状態ですね。社内で毎年技術表彰の制度があるのですが、新しい技術を開発してもエントリーできず、発信できない状態が続いていました。他の部署が開発したと誤って認識され、全国の支店の営業担当者に魅力などが伝わらずうまくPRできなかったり、商品にさびなどの不具合が生じた際に私たちの部署へ連絡が来なかったり…。そんな経緯を経て、3―4年ほど前に部長に就任しました。JFE建材初の女性部長の誕生です」
――周囲の反応は。
「男性社員のみなさんが『プロパーの女性社員とうまくなじめるだろうか』と心配してくださっていたようです。実際は心配事なんてなし。楽しいです!(笑)。ちなみに他の部署には女性社員がいますが、私の部署にはいません。女性の部下にぜひ入ってきてほしいです」
――鉄鋼業界に女性が増えてほしいですか。
「増えてほしいですね。私の世代など年長組の女性は、男性と同じやり方で仕事をしなければならないと思い込んでいる部分があると思います。男性と同じ成果では認められず、2倍結果を出して初めて同等に扱われるかどうか、とも言われていました。結婚前と同じように働くことはできないと言って辞めていく女性社員が多かったです。男性のやり方が正しい、1番良いとも限らないと思いますし、そういったことにこだわらず、自由に考えて自分らしくまい進してほしいですね。ただ現状では男性の管理職ばかりなので、本人が良いと感じた仕事でも、評価・承認するのは男性になると思います」
――鉄鋼業界について思うことを。
「今でこそ働き方改革がありますが、昔は会社で寝泊まりするくらいが勲章、という風潮がありました。一方で子育て中の私は、保育園の時間を守らなくてはいけない状況です。もしも保育園から出禁になってしまったら、仕事どころか何もできなくなってしまいますから。就業時間内に自分の時間をやりくりし、集中力を高めて業務を成し遂げなくてはなりませんでした。多くの男性と違う価値観を持って働いていましたが、こうやって仕事をこなせていたので問題ありませんでしたね。周囲に合わせる必要もないと実感しました。世の中が変われば価値観も変わります。今までは古い体質などを変えてくれるきっかけがありませんでしたが、女性社員が増えることやその存在自体が、業界を変えてくれるのではと思っています。いろんなことを変えていける力を持っているのは、今までいなかった女性じゃないかと。特に若い方々は力をたくさんお持ちのはずです。増えるとともに、思ったことに自信を持ってどんどん進んでほしいですね」
――今後の思いを。
「管理職に就いていることもあり、開発や試験などの最前線は部下を見守るような形で携わっています。現場にも部下を引っ張って行くことが多いですね。若い人材を育てたいという気持ちがだんだん強くなってきています。部署としては、JFEグループの中の1会社であることを生かして、JFE建材ができることを各グループ会社に発信していきたいです。そして、グループ会社内で仕事の相談をする関係になるなど、距離を縮めたいですね。『JFE建材ってすごい仕事をしているね!』と思っていただけるようになりたいです」(芦田 彩)