【伊藤忠丸紅鉄鋼・MISP勤務の城井かの子さん】
――新卒で2007年伊藤忠丸紅鉄鋼(MISI)に入社し鋼材第二本部鋼材貿易課条鋼課に配属されました。志望したきっかけは。
「学生時代、中国に約1年間留学をしていた時に、都市が発展していく様子や開発途上の地域を見て、インフラ関連に漠然と興味を持ったことがきっかけです。その後、産業の基幹素材である鉄に興味を持ち、MISIに入社を決めました」
――当初から海外勤務を志望していたのですか。
「海外勤務志向はありましたが、入社数年経った頃に結婚することとなり、その頃は志望度が低下していました。子どもが生まれて18年2月から9月まで産休・育休を取得したのですが、18年10月に仕事に復帰してから、改めて海外勤務を考えるようになりました」
――21年5月から伊藤忠丸紅鉄鋼のシンガポール現地法人(MISP)に赴任されました。
「子ども(4歳の男の子)と夫を帯同し赴任しました。夫は自身の会社制度である3年間の『配偶者転勤休暇制度』を使ってシンガポールに来てくれました。幼稚園での弁当持参の日には主人が作るなど"専業主夫"をしてくれているおかげで、私は仕事に専念できています」
――シンガポール会社の概要を教えてください。
「30人弱のナショナルスタッフ(NS)がおり、日本人駐在員は私を含め3人です。営業部隊は2部あり、シンガポール国内需要を捕捉するDiv1とオフショアトレードなどを行うDiv2があります。私はDiv1に所属し、セールスマネージャーとして鉄筋などの建材製品および厚板などを多く扱います。現在、主軸となるのは当地の日系ゼネコン向けですが、地場のファブリケーター、問屋にも鋼材を販売しています。その他バングラデシュ、ミャンマーなどODA関連の仕事も管轄しています」
――取り扱う鋼材は現地調達ですか。
「基本的に鉄筋は現地サプライヤーから調達し、日系ゼネコンをはじめ、需要家に供給しています。その他製品は日本のサプライヤーが多いです」
――現在のシンガポールの建材需要はどうですか。
「政府が各種プロジェクトを計画しており、全体的には底堅く推移するとみています。今年は大規模な公営住宅の建設が引き続き好調ですが、来年は地下鉄工事(クロスアイランドライン)などの土木関連、再来年以降はマリーナ・ベイ・サンズの拡張工事やチャンギ空港T5などの建設案件なども動き出す予定です。径の大きいトンネル工事などは日系ゼネコンが強く、徐々に受注のニュースが聞こえてきており、そうした需要を確実に捕捉すべくチーム全体でワークしています」
――海外勤務にあたり志望地域はありましたか。
「特にありませんでしたが、大学で中国語を学んでいたので、それをより生かせる国・地域が良いなと考えていました。当地では華僑の方々が歴史的に経済の中心的な存在であり、英語はもちろん、中国語も通じるので、過去の蓄積を生かせていると思います」
――初の海外駐在で苦労した点などありますか。
「新型コロナウイルス禍での赴任で、現在も一部リモートワークが続いています。1月から50%程度の出社比率に戻りましたが、それまでは週1程度に留まっていました。『初めまして』のお客さまとリモートだったので、本当は懐に飛び込みたいけどできないというもどかしさがありました。現地スタッフとも直接会えないこともあり、一体感を感じるのに時間がかかりました。現在は5人までの飲食が許可されており、少しずつですが日常が戻ってきた印象です」
――仕事でのやりがいを感じることは。
「赴任前は厚板貿易課に所属しており、当時担当していたお客さまとこちらに来て実際にお会いし直接商談にあたり、注文数量増につなげられたことでお客さまやサプライヤーに直にお褒めの言葉をいただいたことは素直に嬉しかったですね」
「一方で、条鋼関連は10年ぶりの取り扱いとなります。主軸である日系ゼネコンに対してもっと貢献できるように、NSの意見を尊重しながら連携し頑張りたいです」
――仕事上の目標をお願いします。
「地に足を付けてローカルビジネスに浸かり、商社として需要家とサプライヤーをつなぐ役割を果たしていきたいです。また武器である中国語をもっと上達させて、周囲の信頼をさらに得られるように頑張りたいと思っています」
――休日はどう過ごしていますか。
「できるだけ家族3人で公園、動物園、植物園、果ては典型的な観光名所等々にも出かけるようにしています。子供だけでなく"駐夫生活"も彩あるものになればいいなと思っています」
(菅原 誠)