東京製鉄は22日、4月契約分の鋼材販売価格(店売り向け)を全品種で引き上げると発表した。ロシア・ウクライナ情勢に伴う国内外市場の急激かつ大きな変化を受けたもので、上げ幅は条鋼類がトン当たり7000円、鋼板類と角形鋼管は同1万円。ベースサイズの販売価格としてはホットコイル、熱延鋼板ともに08年7―8月契約分(ホットコイルはトン当たり11万7000円、熱延鋼板は同12万円)を超えて、過去最高となった。全品種の値上げは21年6月契約分以来10カ月ぶりとなる。
値上げ幅はホットコイルと縞コイル、酸洗コイルと溶融亜鉛めっきコイル、熱延鋼板と縞鋼板、酸洗鋼板と厚板、角形鋼管はトン当たり1万円。H形鋼と縞H形鋼、I形鋼と溝形鋼、U形鋼矢板と異形棒鋼は同7000円。
同日会見した今村清志常務取締役営業本部長は、「当面はロシア、ウクライナという鉄鋼供給基地の機能不全が国際マーケットに大きな影響を及ぼし、鋼材市況がさらなる上昇トレンドに入るのは確実な情勢。海外主要ミルの輸出が欧州、中東など遠国に向けられ、日本で輸入材圧力は急速に失われてくる。また、高炉メーカーの輸出シフトで国内向け供給が絞られ、国内需給は引き締まるだろう」とコメント。また、「世界的に鉄スクラップや諸資材の価格が上昇し、為替も円安に振れ、想定を上回るほどのコストアップを余儀なくされており、規格エキストラの改定を含め製品販価を大幅に引き上げた。これでもコストアップ分を反映し切れておらず、状況次第では追加値上げに踏み切る可能性がある」と述べた。
今村常務は海外市場動向に関して、「ロシア、ウクライナ両国による鉄鋼関連商品の供給不安から欧州向けを中心に価格が急騰し、この影響が世界各地に伝播している。原料炭や銑鉄、鉄スクラップはじめ、スラブやビレットなどの半製品は過去最高レベル近くまで価格が上昇しており、欧州や中東では鉄鋼メーカーによる大幅な製品値上げが行われている。アジア市場は原材料市況上昇分を販価に転嫁する動きが急速に高まっており、米国市況も一変して上昇基調に転じてきた」と分析した。
国内市場については、「建材品種は前月までのメーカー値上げに対して、流通の価格転嫁の動きに遅れがみられるものの、流通在庫レベルはほぼ適正で、一部の大型サイズで在庫切れもあり、需給調整と市況好転が進むだろう。鋼板品種は厚板の国内需給は均衡し、市中相場は安定推移する。薄板は自動車減産影響が続き、市中在庫の適正化にはしばらく時間を要する。22年度以降はコスト高による販価是正の動きが強まるとともに輸出環境も大きく変わり、需給バランスは改善して製品市況の好転が期待できる」(今村常務)とした。
22年3月の全社生産量(熱間圧延製品ベース)は26万5000トンを予定。ホットコイルは12万トン、このうち輸出向けは3万トン。H形鋼は10万5000トンを、厚板は3万トンをそれぞれ計画する。
輸出環境はこれまでの成約ベースで、ホットコイルがFOB1000―1100ドル、H形鋼は同970―990ドル。前月比でホットコイルは100―150ドル、H形鋼は30ドルそれぞれ上昇している。
鉄スクラップは、「高炉原料や銑鉄、ビレットなどの価格と比較した場合、日本の鉄スクラップ価格はまだ割安感があり、目先、上昇する可能性がある。ただ、急ピッチでの市況上伸はやや鈍化するだろう」(今村常務)。
物件向け販売、在庫販売、輸出商談については今週、オファー止めを実施し、「今回の販価発表に対する市場の反応などを確認する」(今村常務)という。