鉄スクラップ加工・販売を行う伊藤商店(本社=京都市南区、伊藤博永社長)の向日工場(京都府向日市)で、解体・仕分け作業に汗を流すパート従業員の松田由紀子さん、中国出身の林子琪(リン・シキ)さん。松田さんは家庭と仕事の両立を目標としており、今後もパートタイムで働き続ける意向だ。林さんは大学卒業後の来春から、正社員として同社の貿易部で働く予定という。それぞれが考える仕事の魅力や鉄スクラップ業界への思いを聞いた。
――仕事を魅力的に感じた出来事は。
林「ある仕分け作業の時に、とても小さなステンレスが出てきたんです。捨てるか仕分けるか悩んでいた時に、松田さんから、仕分けに分類できると教えてもらいました。『こんな小さなものでもリサイクルできるんだ!』と驚き、感動しましたね。大学でリサイクルやごみについて勉強していることもあり、本当にやりがいのある仕事だと実感した瞬間でした」
松田「お客さまに声を掛けていただける時ですね。大変な話と被る部分もあるのですが、ヘルメット後部に貼り付けているシールを見ていつの間にか名前を覚えてもらえていたり、休日や別のヤードで作業をしていて姿が見当たらないと、後日『(松田さんが)いると思って来たのにおらんかったやん』と親しみを持って声を掛けて下さったり。自分の仕事に納得してもらえないならこのように声を掛けられることはないと思うので、認めていただけているように感じます」
――他に女性が入社して来られたことはありますか。
松田「入社を希望されて入って来られたものの、業務内容と相性が合わず辞めて行く方はいらっしゃいました。伊藤社長が『一度挑戦してみてはどうですか』というスタンスなので、挑戦される方はおられます。男女別の更衣室もちゃんと整備されていますし、働く上で不便な点は特にないですよ」
――鉄スクラップ業界に女性が増えてほしいと思いますか。
松田「増えてほしいです。ただ危険が伴うので、一般的な女性が働く職場と同じ考えで来られると、万が一けがをした場合、自分自身にとって良くないし同僚への迷惑にもつながります。仕事に携わることで初めて分かることももちろんあると思いますが、そのような点も踏まえて挑戦したいと思ってくださる方に来てほしいです」
林「増えてほしいですね。鉄スクラップも他のさまざまな業界と同じように魅力であふれています。小さなものでも、自分の手で拾うことで再生させられる。素晴らしいことだと思います。いつか技術が進歩し、機械で解体・仕分けするような時が来れば、作業で生じる危険が減るかもしれません。リサイクルに関連する業界は決してなくならないと思います。世界中で新しいものを製造するばかりでなく、使い終わった資源をリサイクルすることがさらに重要視される時代が来るのではないでしょうか。今後特に重要な分野だと思うので、男女問わず多くの方に興味を持って、入ってきてほしいですね」
――今後の目標を。
松田「入社当初から、家庭と仕事のどちらも大切にしたいという気持ちを持っており、社長にも面接でお伝えしていました。水日を除く週5日勤務ですが、どうしても急に家庭の事情を優先せざるを得ない時が生じます。その場合はすぐ会社に連絡し、休ませていただいています。信頼していただけているからこそ、このような事情を受け入れてもらえていると思うので、うれしく感じています。まだまだ覚えないといけない仕事、分からないことがたくさんあるので、1日1日努力して、できる仕事を増やしていきたいです」
林「工場では、松田さんのような1人前の存在に、他の人のサポートができるほどの戦力になりたいです。大学を卒業して貿易部に配属されたら、知らないことをいろいろ学びながら、オーダーを取ったり、自分から営業の成果も出したりできる存在になりたいです。今書いている卒業論文のテーマが『アジアの資源循環におけるコンセンサスの役割』なのですが、正社員としてさらに本格的に働くことで、この業界をもっと理解できるようになりたいです」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。