鉄鋼業界で働く女性は全国に広がっている。北海道の厚板溶断加工最大手、玉造(本社=札幌市、西村孝治社長)は、20年以上前から女性を積極的に採用し、従業員の女性比率は2割に上る。工場の環境整備や女性用更衣室の充実などに努めるほか、産休・育休制度を設置し女性の活躍を後押しする。若手女性職はなぜ鉄鋼業界、地方建材シャーの門をたたき、今何を思っているのか。主力の恵庭工場(北海道恵庭市)の溶断部門で10年以上働き、共に札幌商工会議所ものづくり新星部門最優秀賞を受賞した北嶋里江さんと石川晴奈さん、同じ高校を出て現在21歳の中嶋彩乃さんと吉田比菜代さん、1年間の産休を経て復帰した事務職の小松麻由さんに話を聞いた。
――玉造に入社したきっかけは。
北嶋「高校3年生の時に、求人説明会に来てくれたことです。普通科で鉄鋼業界志望というわけではなかったのですが、体を動かせる仕事がしたいと思っていました。工場見学に行ってみると、女性のオペレーターさんが活躍されていて、働きやすそうだなと思ったことも決め手です」
石川「北嶋さんと私は2008年の同期入社ですが、その年は女性9人、男性2人と女性が多く採用されました。私は父が鉄工所で働いていて、後ろ姿を見て地元留萌の工業高校を選びました。玉造との出会いは、当時工場長だった方が留萌出身で、地元で求人広告を出したことです。その後工場見学をして決めました」
中嶋「2018年入社ですが、私はもともと小学生の頃からモノをつくることが好きだったためです。普通高校だったのですが、地元の恵庭で働くことができることと、工場見学をして仕事がおもしろそうだなと思ったためです」
吉田「最初は漠然と求人広告を見ていていたのですが、学校の先生から玉造さんは工場見学ができるらしいよと言われ、実際に行ってみると女性の方も現場にいて、働きやすそうな環境だったことが決め手です」
小松「私は前職が菓子製造でハードな仕事だったのですが、事務の仕事がしたいと思って2014年に転職しました。ハローワークの求人募集を見て、通いやすさなどから決めました」
――今の業務内容を教えて下さい。
北嶋「恵庭工場には5つの工場がありますが、そのうち第5工場で働いています。作業のロスが少ない=ロスナイ工場と呼んでいます。プラズマ切断機2基、NCガス切断機2基、プレーナー兼用NCガス切断機2基の計6基を放射状に並べた工場で、場長代理としてオペレーター業務や材料の準備など工場を回す仕事を兼務しています。同工場はアルバイトを含む9人で動かしていますが、そのうち4人が女性です」
石川「私はプラズマ切断機のオペレーターをやっています」
中嶋「私は北嶋さん、吉田さんと同じロスナイ工場で、ガス切断のオペレーターをやっています」
小松「事務部門で電話応対やお客様対応のほか、会議で使う工程表などの資料作成もやっています」
――女性の視点から見た鉄鋼業界、玉造をどう思いますか。
北嶋「当社は人と接しやすくて、コミュニケーションがとりやすい会社だと感じます。2年前には女性5人でモンゴルへ視察に行かせて頂きました。北海道機械工業会主催の海外視察に参加したもので、他の会社さんは1―2人、社長クラスが来られているなか、当社は私たちを行かせてくれました。ものすごく嬉しかったし、現地の工場でいろいろなことを学びました」
石川「トイレや更衣室など女性が過ごしやすい環境を整備してくれていますし、資格取得に向けた勉強時間の確保など手厚く支援して頂いています。鉄鋼業界については、まだまだ3K(きつい、汚い、危険)職場のイメージは払拭できていないですね。改善はなかなか難しいのかなと感じます」
中嶋「工場見学の時に休憩室などを見せてもらい、女性用トイレや更衣室などがキレイだったので安心して入社できました」
吉田「有給休暇を取得することへの理解があり、とても満足しています。中嶋さんと入社する際に、更衣室を広くして頂いたほか、衝立を置いて個室感を出すなどくつろぎやすい環境で気に入っています」
小松「2歳の子どもがいるのですが、子育てする私にとってとても働きやすい職場です。出産する際に産休・育休制度を創設して頂き、現在、私のほかにもう1人同制度を利用しています。保育園の送迎を考慮した時短勤務や、子供が急に熱が出た場合でも柔軟に休ませてくれるなど、大変感謝しています」(深田 政之)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。