2021年6月4日

鉄鋼業界で働く/若手女性営業職編 座談会(下)/「一人の営業職」として

■国内店売り営業の仕事の印象

飛鷹友香さん「初めての大阪勤務ですが、どの取引先も接しやすいです」

新田琴乃さん「関西地区のあるコイルセンターに初めて訪問し工場へ入るときに、来客用の作業着がLLサイズしかないことがあったのですが、次に訪問した時に女性用の小さめサイズを在庫から探し出してくれていた、ということがあり、気遣いや優しさを感じました」

産業新聞女性記者「取引先と良い関係を築くために気を付けていることはありますか」

新田「分からないことは分からないと言うこと。皆さん、丁寧に教えてくださいます。お客さまとの信頼関係を早期に構築するために、過去に話した内容など細かいことでもメモしています。お客さまに対して細やかな対応、気遣いが常にできるように心掛けています」

飛鷹「私も言われたことは小さなことでもメモして、次会う時に事前にチェックし、会話の中に取り入れたりするようにしていますね。男性でも女性より細やかで丁寧な人、女性でも大ざっぱな人など、それぞれ個性があり、性別に関係なく自分の特性を生かすことが大切だと思います」

新田「2人で話している時も、男性・女性という区別は感じていないな、と話題になりました。伸び伸びと働かせていただいていると感じます。でも本当は、周囲は気を遣ってくれているかもしれません。例えば、自分が一番後輩なのに、先輩に頼み事をしてもらえないことがあり、その雰囲気をなくそうと努力しました。男女気にせずに接してもらえたらと思います」

飛鷹「私も大阪支社で初の女性総合職なので、上司や先輩方は、担当の持たせ方や教育など最初から気にかけてくださっていたようです」

■鉄鋼業界と女性

記者「鉄鋼業界に女性が増えてほしいと思いますか」

飛鷹「私たちとしては増えてほしいです。でも、お客さま、取引先にとって必要なのかは正直分かりません」

新田「ひも付きだと取引先に女性がある程度在籍されているので、女性の営業職の方が打ち解けるスピードも速いのではと思います。この業界に女性があまりにも少ないからか、まだ自己紹介をしていない取引先の方にも存在をすでに知っていただいているなど、とにかくすごく覚えてもらえる利点もあります。女性営業が増えてくると変わると思いますが、今の良い点かもしれないですね」

新田「女性だから、ということでなく、一人の営業職として、自分の意見をしっかり持ち個性をアピールできる人が増えればいいなと思います。例えば、自分の仕事に誇りと自信を持って『この製品が良い』と勧めている人の方が、取引先に認められているように感じます」

飛鷹「鉄鋼業界に限らず、自分の得意なところを強みにできる人が営業に向いていると思いますね」

新田「自分たちは気にしていないけど、周囲が、過剰に“女性だから"と気にしているように感じます」

飛鷹「男性社会なのは覚悟した上で入社しているので、思ったより女性がいるなと思ったくらいです。男性だから、女性だから、というのを気にする人がいなくなるくらい、男女関係なく活躍する人が多い業界になってほしいです。強く願っています」

■将来の展望

新田「入社1年目に、自分の販売する鋼板が身近にあるガードレールになると聞いてうれしくなり、やる気につながった経験があります。『このビール缶は僕が扱っているよ』『ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの新アトラクションの鋼材を扱ったよ』と先輩や同期から聞くと、自分も、消費者により近い鉄を扱いたいと思います」

飛鷹「シンガポールのマリーナベイ・サンズの屋根などにJFEスチールの鉄が使われています。建物なども目に見えて分かるのでうれしいですよね」

新田「東京スカイツリーにもJFEスチールの鉄が使われています。長期的な視点では、もし結婚・出産するとしても、国内店売りの初の女性営業職に選んでいただけたからには、働けるところまで働いて、上り詰めてみたいと思います」

飛鷹「私は昇進したい気持ちは強くないのですが、知多製造所時代に輸出のお客さまを担当していたので、いずれ輸出など海外に関する仕事もしてみたいですね。全国転勤もあるので、結婚していても同居できない期間は必ず生じます。家族とはライフイベントも含めしっかり話しているので、うまく両立して楽しくやりがいのある仕事を確実に続けていけたらなと思います」

記者「家庭と仕事を両立している前例はありますか」

新田「社内で仕事と家庭を両立している女性総合職の先輩は多くいますが、営業の女性総合職で両立している方は私の周囲にはいないので、現状ではイメージが湧かないのが正直なところです」

飛鷹「東京本社は子育てと両立している先輩も多いですが、支社では前例が少ないため、どの勤務地でもマーケットの受け入れ体制、環境なども含め改善され、女性が長期的に働きやすい風土が今後整備されたらよいですね。最終的には“女性が"などと意識せずに活躍できる場所が増えることを望んでいます」

(芦田 彩)



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