2001.09.10
高 炉大手各社は7日、02年3月期の中間および通期決算見通しを発表。各社とも今年5月(下旬)の収益予想を大幅に下方修正した。連結ベースの通期経常利益見通しは、新日鉄が1150億円を550億円に、NKKが200億円の黒字を230億円の赤字に、川鉄が500億円を380億円に、住金が100億円をゼロに、神鋼が190億円をゼロに、日新が65億円の黒字を120億円と98年以来の赤字に、いずれも3ケタ単位で下方修正された。内外需要が低滞、生産・出荷が減少するなかで、主力商品である薄板類の価格が国内、輸出とも予想以上に下落したことが主因。下期での景気好転期待がウラ目に出たことも響いているが、わずか3カ月半の間に高炉大手の業績見通しがこれほど大きく狂うのは極めて異常だ。

 連結通期経常利益見通しの誤差の大きさがとくに目立つのは新日鉄600億円、NKK430億円、日新185億円。新日鉄は上期での粗鋼80万トンの減産が、NKKは連結対象のナショナル・スチールが今期に480億円の損失を計上することが連結業績を大きく押し下げる原因。日新はステンレス事業では通期で60億円程度の黒字を見込むが、普通鋼表面処理の価格下落が大きく響く。

 連結通期の経常利益がマイナスになるのはNKK、日新の2社。

 連結通期の当期利益見通しも、新日鉄が600億円を200億円に、NKKが50億円を150億円の赤字に、川鉄が200億円を130億円に、住金が700億円の赤字を900億円の赤字に、神鋼が70億円をゼロに、日新が35億円の赤字を160億円の赤字にそれぞれ下方修正し、6社のうちNKK、住金、日新の3社が赤字の見通し。

 中間配当は6社とも見送りを決めている。

住 友商事は野村貿易(本社=大阪市)の鉄鋼貿易事業を買収する方向で本格検討に入った。野村貿易が持つ東南アジアの薄板コイルセンターなど合弁事業会社8社の権益を継承、アジア市場における存在感をさらに高めるのが最大の狙い。遅くとも年内に買収契約を完了するものと見られる。住商はアジア域内で12社の薄板CCを展開する。野村貿易の権益継承によりCC網を3社増の15社に拡大、加えて対応強化を検討していたベトナム市場への本格進出も果たす。野村貿易は鉄鋼国内事業を住金物産に売却済みで、住商への貿易事業売却により鉄鋼製品事業から完全撤退することになる。

 関係筋によると、この買収交渉は数カ月前にスタートされ、野村貿易社内では先週、公式に経過報告が行われていた。

 買収の対象は、野村貿易の鉄鋼貿易部門の営業権および東南アジアにある合弁事業会社8社に出資する株式。これら事業にかかわる国内外30人弱の従業員については住商が引き受けるもよう。買収金額は未定。

 東南アジア8社の年間売上合計は約180億円、鋼材販売量が30万トン弱。8社ともに単年度ベースでの黒字操業にあるとされる。

 8社の内訳はベトナム4社、タイ3社など。ベトナムには現地資本との合弁によるコイルセンター、亜鉛メッキ鋼板製販、屋根・壁材製販事業、住友金属工業および三井物産との共同出資によるメカニカル・チューブの製造販売会社がある。またタイには現地資本とのコイルセンター、住金との電磁鋼板コイルセンター、住金、三井物産とのメカニカル・チューブの製販会社を持つ。

国 土交通省は7日、10月分の主要建設資材需要予測を発表した。普通鋼鋼材は235万トンで、前年同月比9・1%減と4カ月連続の前年割れ。民間非居住建築物の着工床面積が6カ月連続で前年比減になっているため。小形棒鋼は96万トンで同4・0%減と5カ月連続のマイナス。形鋼は54万トンで同16・9%減と4カ月連続減と予測している。

 他の資材と比べると、木材が137万5000立方メートルで前年同月比10・4%減、生コンクリートが1275万立方メートルで同6・5%減、セメントが630万トンで同4・1%減と、軒並み前年度比で減少しているなかでも、形鋼の落ち込みの
高 炭素線材および製品の輸入材浸透率が高まっている。とくに製品の輸入が顕著で、国内向け生産に占める輸入材比率は、硬鋼線が90年暦年の0・6%から7・4%、亜鉛めっき鋼線は1・7%から17・3%と増えている。今年1―7月の製品合計輸入量は前年比7・0%増の5万4720トン。線材・製品とも韓国からが多く、品質向上や円高基調が要因。国内ではワイヤロープ事業から撤退するメーカーもあり、内需低迷や単価下落と相まって国際競争の圧力が強まっている。

 エンドユーザーが低価格の輸入品を手当てし、「ローグレード品から高付加価値品に傾いている」(神戸製鋼所)。線材製品協会の統計によると、硬鋼線は、88年に1000トン台(浸透率0・5%)に乗り、00年に2万310トン、浸透率は過去最高の7・4%となった。半数は韓国からで残りはイギリス、米国、台湾の順。

 亜鉛めっき鋼線は、95年に前年比約4倍の1万2770トンに急速に増え、浸透率は22・0%を記録した。00年は量的に過去最高の1万1830トンが輸入された。ベルギーが4割程度でイギリス、韓国が続く。
建 設鋼材販売・加工業の吉田鋼業(本社=大阪府東大阪市、吉田清社長)は今月3日付で、会社を過去の負の遺産を引き継ぐ会社「エスワイケーエー」、不動産賃貸業務を行う「エスワイケービー」、建設鋼材販売・加工業の「吉田鋼業」に3分割し、新たなスタートを切った。新生「吉田鋼業」は業務を大幅にスリム化、売上高130億―150億円、要員70―80人の規模で、初年度から2億円の経常利益を目指す。

 吉田鋼業はバブル期に地方の加工センターを拡大。その後の環境悪化により、拡大路線が経営負担として重くのしかかったが、再建策で重荷を軽減すれば関西地区での営業基盤を軸に再生が可能だと判断した。

 分割3社のうち、エスワイケーエーは吉田鋼業の劣化した債権を引き継ぎ、年内をメドに債権を売却して会社を整理。整理損は既存株主経営者間で引き受ける予定。エスワイケービーは、従来から吉田鋼業が賃貸している加工拠点などからの賃貸料が業務の主体。

 これまでの鋼材販売・加工業を引き継ぐ吉田鋼業は資本金17億円で、出資比率は吉田清社長が90%、トーメン10%。トーメンから杉山忠良氏を副社長として、織田征男氏を財経担当取締役として派遣する。

 売上高はこれまでの250億―260億円から、130億―150億円に半減。要員はピーク時の200人から70―80人に削減。鋼板事業部、建材事業部、工事事業部、加工センター2カ所(北九州のスプライスプレート加工、三重のBH加工)の4事業に加え、既存の大阪府内の営業倉庫2カ所(H形鋼、厚板)のスリム化した形態での再出発。初年度から2億円の利益を確保する計画だ。

薄 板加工品の梱包に使用するスキッド(型枠)で、スチール製の使用を検討するコイルセンターが全国で約35%あることが、全国コイルセンター工業組合(理事長=鈴木貴士・五十鈴社長)の調査で分かった。スチールスキッドの採用が広がる可能性を示す一方で、回収システムや作業性など、普及の課題も明らかとなった。

 全コ工組が実施した環境問題に関する意識調査によると、スチール製のスキッドを一部あるいは相当量使用しているのは、全国で44%(回答数106社中45社)。使用していないが、使用を検討しているのは35%(37社)で、木製ではなくスチール製スキッド採用が徐々に広がり、関心を持つ企業も多いことが分かった。

 「すでに相当量使用している」と回答したのは全国で11%、地区別でみると関東地区が18%(8社)と最も多く、東海地区が3・8%(1社)と最も少なかった。各地区とも20−30%の企業が「いまだ少ないが一部使用している」とし、使用例の少ない東海でも50%(13社)が「使用していないが使用を検討している」と答えた。

 一方で「使用するつもりはない」との回答も全国で23%(24社)あったが、関西地区では8・0%(2社)にとどまり、将来的な採用に前向きな姿勢が目立つ。
関 西地区のコイルセンターの三協鋼業(本社=大阪府松原市三宅西、木村哲治社長)は今期(02年8月期)、売上高で年間22億円強、経常利益で4000万円以上を目指す。きめ細かな営業と生産効率の引き上げにより、加工量はレベラーで年間8万5000トン前後、シャーで同1万5000トン前後、トータルで同10万トンを計画。歩留まりの引き上げ、設備の省人化でコスト低減を推進する考え。

 同社は本社工場にレベラー1基、シャーリング6基の加工設備があり、熱延薄・中板、酸洗鋼板、表面処理鋼板の1・2次加工を行っている。

 前期(01年8月期)の業績は集計中の段階だが、売上高で年間22億円、経常利益で4000万円となったもよう。

 これは上期の取り扱いが好調な状態が続き、7―8月は前年同月比20%落ちたが、最終的に加工量は年間9万5000トンと堅調だったこと。この加工の製品別の内訳は熱延が40%、酸洗が35%、表面処理鋼板が25%。また、33人の少数精鋭体制とコスト低減の徹底もあって、今年8月を除いて月次業績で黒字が続いたことによるもの。

 今期は価格の値戻しと、加工機能など存在価値を全面に打ち出した、きめ細かい営業により、加工量は年間10万トンの大台の達成を目指す。加工目標の内訳はレベラーが同8万5000トン前後、シャーが同1万5000トン前後。

 また、加工の省人化を進めるとともに、歩留まりの向上を図る。省人化と設備の老朽化対策として、来年1―2月にも新鋭のセミオートシャーを導入、既存設備とリプレースする。導入施設備は鋼板で厚み最大6ミリ、幅で最大2メートルまで対応可能。

 これらの取り組みにより、売上高で年間22億円強、経常利益で4000万円以上の確保を目指す。

一 般形鋼流通は、一部のサイズエキストラを8月以降、1000―5000円上げた。比較的荷動きの悪いサイズが対象。4カ月前に、13×90と13×100の場合で従来のベース価格プラス5000円を1万円に、12×75でベースプラス4000円を1万円にそれぞれ上げた結果、1万円の浸透に成功したこともきっかけになった。流通は今回のサイズで浸透するのを見計らって、今後ベースも上げていきたい考え。

 4×50では従来のベースプラス1000円を2000円に、7×90など4サイズでは4000円を5000円にして、それぞれ1000円上げた。最も浸透率が高いのは、従来のベース価格から、今回5000円に唱えを上げた8×65のサイズ。3000―4000円が浸透しており、5000円で通ることもあるという。

東 京地区の異形棒鋼はゼネコンの厳しい指し値から、ベース2万6500円中心で弱横ばい。

 デリバリーは大きくタイト化しており、とくに細物はメーカーによる輸出と減産で「鉄筋加工業者の在庫倉庫は底が見えている」(商社)状況。

 メーカーは、9月も枠売り継続で販売価格を据え置いている。他地区市況の低迷で値上げに踏み切れないが、上昇志向は堅持。7、8月と細物メーカーが値上げしたことで、商社の販価是正の動きは強まったが、ゼネコンの買い姿勢はなお強く、一部専業商社による安値販売もあり、市況はもたついている。

 ただ、細物輸出が12月まで引き合いがあり、年内は需給タイトが続く見通し。

東 京地区の厚板は横ばい。市中価格(12ミリ、ベースサイズ)は3万9000―4万円中心。

 海外プロジェクト向けUO鋼管や造船の受注が好調なため、高炉メーカーの供給には余裕がない。ただ、需給はほぼ均衡または余剰感がある状況で、薄板など他の鋼板に比べると市況は底堅いものの横ばいで推移。

 定尺品、切板の販売は6、7月と前月比プラスが続き8月を除けば堅調。しかし、大型物件以外の民間鉄骨をはじめ建機産機などの需要は停滞し、溶断業者によっては仕事量が確保できず落ちている向きもあるようだ。板厚の大きい素材ほどタイト感があるが、全体的には在庫調整の局面が続く。

大 阪地区の異形棒鋼は底入れ感が広がっている。地区メーカーの9月契約からの値戻しや10月以降の減産強化表明を受けて、流通筋では底値を確認しつつ、唱え上げの動きをとり始めた。

 これにより市中での2万1000円台の安値取引はなくなりつつある。

 ベースメーカーは10月から大幅減産を実施、これにより先行き需給タイト化が予想されるが、商社筋では「実際に供給が絞られ、納期がタイトになってこないと先高観は出ない」とみている。

 10月以降の展開待ちといったところで、相場は底入れ後、しばらくもちあいで推移する見通し。市中相場は2万2000―2万2500円どころ中心。