2000.11.02
ト ーメンの国内鉄鋼販売部門からは、オリエンタル鋼業(富山県)と関東コイルセンター(東京都青梅市)が豊田通商に移管され、トーメン鉄鋼販売(大阪市)とトーメン建材リース(東京)、さらに吉田鋼業(大阪)はトーメン傘下の企業として残る見通し。また、キヨイ鋼業(大阪)は豊通との協議を進め、構造物加工のテクノスクエア(栃木県)は整理される方向。大筋ではヒモ付きが豊通へ、店売りの商権はトーメン自身による抜本的対策を講ずる手術が迫られている。

 トーメン鉄販の商権は一部豊通に営業譲渡されるものの大半は残り、同社もトーメンの子会社として業務を続ける。重仮設材リースのトーメン建材リースは、売却を含め来年3月までに整理に向けた決断が下される見通し。

 鋼材特約店の吉田鋼業も、新たな体制づくりが迫られている。

 一方、キヨイ鋼業は、主要取引先であるNKKの意向を踏まえながら豊通と協議し、今月末までに結論を出す運び。テクノスクエアは、関係者によると解散がやむを得ない状況とされる。

 こうして豊通のスクリーニングから漏れた子会社は、トーメンの手によって抜本策が取られていく。これら子会社に関しては、国内の商権と要員の大半が事実上トーメン鉄販に移管されているため、形の上では同社が不良債権の処理も含め整理を進める。このなかでテクノスクエアと同様に、トーメン鉄販も含め整理を余儀なくされる子会社が出てこないとも限らない。

川 崎製鉄は、鉄粉事業を一段と高度化する。自動車、IT(情報技術)関連需要の増加を受けて、現行中期計画(99年度―01年度)の当初目標年間6万トンを今春、同6万6000トンに上方修正したが、今年度末で達成できる見込みとなり、今後も人員シフト変更など能力見合いの同7万2000トンレベルへの引き上げを目指す。

 技術面でも自動車部品での軽量化ニーズに対応、高強度化、高密度化を推進。広温度領域で密度7・3トン/立方メートルに応じる温間成形用を拡大、来年度には密度7・6トン/立方メートル対応製品を商業ベースに乗せ、さらに2、3年後をメドに密度7・8トン/立方メートルレベルの製品を投入するほか、磁性材料など合金鋼粉末を強化する。7万2000トン体制では高付加価値化として、合金鋼粉を含むアトマイズ鉄粉を拡大、還元鉄粉との比率をほぼ50%ずつとする計画だ。

 鉄粉需要は欧米、アジアと自動車での使用原単位の上昇を映し拡大を続けている。特にアジア地域では

日本で自動車の使用原単位が従来の1台当たり6・5キログラムから7・5キログラムとアップ、さらに伸展している状況で、韓国、タイ、マレーシアなどでも同様の動きにあるという。

 こうした市場動向を加味して同社では当初計画を上方修正するなど、量、質両面から高度化する。

 生産面では千葉製鉄所の鉄粉工場で、今年度末までに6万6000トン体制を達成させる。すでに前年水準を10%強上回っており、さらに拡大していく。来年度以降には、さらに次ステップを見据え、シフト変更などを通じ、生産量を能力いっぱいの7万2000トン体制を志向する。6000トンの増加分はほぼ全量を合金鋼粉などのアトマイズ鉄粉とし、還元鉄粉については現状の3万6000トンレベル横ばいとし、内容の充実を図る。これらによって年間事業規模を今年度で55億円規模とし、来年度以降には60億円以上に高める。

通 産省は中国の鋼材輸入規制問題など、鉄鋼貿易問題に関する国家経済貿易委員会(経貿委)の王琴華・貿易市場司副司長との31日の協議を受けて、今月8日、北京で行われる日中次官級定期協議でも鉄鋼貿易問題を取り上げる。王副司長との協議では現地日系コイルセンターによるコイルセンター中国協議会のメンバー9社も加わり、今年分の輸入許可証(IL)の必要量の早期発給、来年分の円滑実施とルール、手続きの明確化を求め、中国側は今年分では追加枠を設けるとし、来年分については今月中旬までに要求を行うよう答えた。これらを踏まえ、次官級協議ではIL発給の円滑実施の確認、ステンレス冷延薄板アンチダンピング措置の調査状況で台湾製品の扱いなど、日本側の要求が受け入れられているかなどを明確にする。

 31日に開かれた王副司長との協議には、通産省・鉄鋼課の高島竜祐課長補佐とコイルセンター中国協議会の華北、華南などの地域代表9社が出席、中国側に状況改善を求めた。中国への2000年のIL要求枠は約50万トンにのぼるとされるが、このうちコイルセンター向けなどへの発給は約40%にとどまり、発給ゼロの企業もあり、取引のキャンセルなど事業に支障を来していると説明、中国政府からの直接発給の実施も申し入れた。

 これに対して中国側は外資系企業には優先して発給してきたとしつつも、今年の需要が増加しており、追加枠を出すと答えた。重点企業から行うとしたものの、時期については触れなかった。さらにコイルセンターが物流・加工で機能をはたしていることを評価するものの、最終ユーザーとの重複要求の問題を指摘、重複要求の排除が求められた。来年分については、今年よりも枠を拡大すると回答、11月中旬までに地方窓口に対し要求を提出することとなった。

エ ヌケーケーシームレス鋼管(代表者=松下祐三氏、ホアン・カロス・アゴリア氏)は8月からの発足以来、輸出向け油井管市況の回復基調を支えに、生産が年率ベースで25万―26万トンレベルを維持するなど、操業は順調に推移している。長期契約を含む輸出価格の改善を柱に、収益基盤の強化を図る。需要の縮小傾向が続く国内営業の強化・再構築が課題。

 NKKTUBES(略称NKK―t)は、世界最大のシームレス鋼管メーカーグループのテチントグループの中核であるシデルカ社が51%、NKKが49%出資し、NKK京浜製鉄所のシームレス鋼管事業を継承して8月1日に発足。NKKの高級グレード品の製造技術とシデルカの世界的規模の生産・販売体制という双方の強みを生かしながら生産・営業を行っている。

 スタート前後の世界の油井管市況の回復傾向を背景に、生産は順調に推移。厳しい需要環境が続いていたNKK本体で生産していた年間23万―24万トンレベルを上回る水準を維持している。シデルカ、タムサ、ダルミネなどテチントグループとして受注した際は、NKK―tが高級グレード品を中心に生産するなど、同社の特徴を生かした展開を進めている。

 輸出のうち、市況低迷時に契約しているオイルメジャー向けの長契価格は契約が更新される予定の01年度以降、改善に取り組むことになる。油井管需要の回復は緩やかな半面、これまでのような急激な反落の可能性は小さいとの判断や、高付加価値製品を主力とするため生産量の増加には限界もあることから、価格改善に重点を置いて収益力の強化に取り組む。

コ ラムメーカーの佐々木製鑵(本社=兵庫県伊丹市東有岡、佐々木克義社長)は来年2月、本社工場に最新鋭の切断・開先設備「KCB―6028ZUW」(ハタリ製)を新設する。顧客からの2次加工の要望に応え、受注強化を図るのが狙い。投下金額は4000万円強。今年春にはすでに、大径コラムの切断加工を強化するため、大型の丸鋸切断機1基(ハタリ製)を導入済みで、今回の新設により、一連の2次加工設備の整備は完了し、2次加工能力は現在の月間2000トンから同2500トンに増える。

 同社は本社工場(敷地面積=3万平方メートル、建屋面積=1万7640平方メートル)に大型油圧プレス設備4基を持ち、角型のBCP「SKコラム」、丸型のプレスコラム「Tコラム」を生産している。これ以外に、切断、、開先設備があり、コラムの2次加工を行うとともに、各種溶接設備を用い、スチールセグメント、各種構造物を製作している。最近の生産実績はSKコラムが月間4500トン、Tコラムが同500トン。

 コラムの2次加工は設備が大径コラム用でバンドソー5台、開先機4台、小径コラム用でバンドソー2台、開先機1台。ただ、今年に入ってからはコラムの生産が増え、この結果、2次加工分野の能力が不足がちとなっていた。この問題を解決するため、2次加工分野の強化を決めた。

関 東のベース小棒メーカーの朝日工業(大塚寿郎社長)は、2万7000円下限を改めて徹底させる。商社向けの枠契約で10月末までに未消化の分を解消し、新規の枠契約は1カ月以上持ち越さない形に改める。需要が好調にもかかわらず、市況が伸び悩んでいる原因を取り除くのが目的で、枠契約の整理に続いて、第2弾として特約店向け販売窓口の集約を検討している。

 朝日工業では市況が伸び悩んでいるのは、メーカーの販売姿勢が原因と見ている。メーカーは2万7000円下限を春先から打ち出しながら、現状もまだ実現していない。「言うことをきっちりやらない」(商社)として、市場の信頼を失っている面がある。朝日工業は今回は有言実行を貫き、市場の信頼を回復したい考えだ。

 市況が伸び悩む一因として、古い枠契約を持ち越す商慣行に焦点を当てている。値上げ後も商社の手元に安い契約が残っているため、値上げがスムーズに浸透しない。このため、10月末で未消化の枠を一端解消し、改めて2万7000円で売り出す。今後は1カ月以上持ち越さない形態に改め、値上げを浸透しやすくしたい考えだ。

 こうした姿勢に市場はまだ反応していない。過去数カ月間にわたって発言を実行できなかったとして不信感は根強く、ゼネコン向けに2万7000円以下で売り越しているのが実情だ。商社が介在するため、特約店に対してはメーカーの実情が浸透しにくいという事情もある。

 朝日工業では、特約店が多数の商社に仕入ルートを確保している点を商慣行改善の次の焦点にしている。1特約店からの受注を多くとも2―3社程度の商社に集約したい考えで、今後流通に協力を求める。



科 学技術振興事業団(川崎雅弘理事長)は、日仏共同研究事業において、単層カーボン・ナノチューブとして安定に存在し得るもののうち、最も細いものである直径が4A(0・4ナノメートル)の超微細ナノチューブを発見し、それが金属的性質を持っていることを確認した。

 この「ナノチューブ状物質プロジェクト」は、高強度素材やガス吸着材、ミクロ構造物、微小電子素材の導体、次世代壁掛けテレビの電極などとして注目を集めているカーボンナノチューブの特性や生成メカニズムの解析、大量製造方法の開発を進め、新しい応用技術を探索する目的で98年1月から5年間の予定で進められている。現在までに、ガス吸着特性などのカーボンナノチューブ特性の把握や、単層カーボンナノチューブの生成メカニズムとして触媒金属元素が深くかかわっていることなどを確認したり、単層カーボンナノチューブの先端が円すい状に閉じたカーボンナノホーンの発見、高出力炭酸ガスレーザーの連続照射による単層カーボンナノチューブの大量生産技術の見通しを得るなどの、数多くの成果を得ている。

 今回、水素雰囲気中で炭素電極を用いてアーク放電を行って作成した多層カーボンナノチューブは、1番外側の層の外径が100A程度で1番内側の最も細いチューブは直径が約4Aであった。この直径はこれまで発見されたチューブの中では最も細いものであり、かつ、これより細いものは安定に存在しないという極限の細さでもある。

東 京地区の表面処理鋼板(電気めっき、ベースサイズ)は下げ止まり状態で雰囲気変わらず横ばい。市中価格は熱延下地6万円、冷延下地7万円どころ中心。

 引き合いとしては9―10月のいわゆる秋需効果がさほど出ておらず、小口の注文を中心にまずまずといったところ。メーカーの供給はほぼ出荷見合いだがわずかに出荷を上回る状態で、9月末段階の全国在庫は24万トン(在庫率183%)と積み上がっている。

 ただ、10月にかけてコイルセンターの稼働が引き続き忙しい状況にあること、新日鉄が発表した電気亜鉛めっき鋼板の引き受けカットによるアナウンス効果など、需給改善への動きが継続するとして、扱い筋は「確実に良い方向へ来ている」(コイルセンター)との見方。

 当面、強気材料は見えないが小売価格については横ばい、自然体の商いが続く見通し。