2000.09.13
新 日本製鉄の環境・水道事業部は、三重県英虞湾で実施される「県営波切・立神地区大規模漁場保全事業工事」の浚渫泥脱水工事を、五洋建設・出馬重機共同事業体から初受注した。今回の受注は、同社の浚渫泥脱水事業参入の第1号プロジェクト。工期は、2000年8月28日から10月20日までで、プラント事業部が開発した高圧フィルタープレス搭載の脱水作業台船「青海2000」で浚渫泥を脱水処理する。同社では、今後、内湾の養殖漁場などをターゲットに漁場、港湾の浚渫泥脱水処理事業に本格参入していく方針。

 高圧フィルタープレスは、同社プラント事業部が開発した高効率フィルタープレスで、1時間当たり30ー60立方メートルの処理能力を持つ。従来のフィルタープレスの4―5倍に相当する4MPa(40kg/平方cm)で汚泥圧入し、脱水ケーキの含水率を40%以下にすることができる。

 脱水後のケーキは、脱水ケーキコーン指数で1平方メートル当たり400kn以上の強度を誇り、浚渫泥の大幅な減容化が図られる。このため特別な処理をしなくても、そのまま埋め立て処理できるようになる。

 英虞湾は、真珠養殖が盛んだが、近年、生活排水や真珠貝の排泄物の堆積などにより、海水が貧酸素状態となっている。特に夏場には、赤潮が発生するなど漁場環境の悪化が懸念されている。ただ、従来は、浚渫泥は、天日乾燥やコンクリート固化するのが一般的だったが、これらの方法は、広大な処分地が必要になることや臭気が発生するなどの問題点があった。



大 同特殊鋼は粉末事業を拡大する。2002年度までの中期経営計画に則して02年度までに数量を倍増の年間6000トン、売り上げ規模も約2・5倍増の年間60億円に引き上げ、利益も4倍近い年間12億円に高める。軟質磁性材料粉末「アジャスタロイ」をはじめとする磁性材料用合金粉末、電磁波吸収材(DPR)用、金属粉末射出成型(MIM)用微粉など高付加価値製品を中心に拡販、トップシェアを持つ自動車のABSセンサーリング用など既存の粉末冶金用(PM品)と合わせ、自動車、エレクトロニクス分野で販路を伸ばす。研究開発にも注力。噴射ノズル技術の改善による微細粒化や近く稼働する試作機によるチタン粉末開発、燃料電池用水素吸蔵合金の開発を推進する。

 同社・粉末事業部では、昨年、製造拠点の粉末工場(名古屋市)で生産能力の増強を図り、月間500トン体制を確立した。現行の中期計画では、これを踏まえて提案型営業の強化など用途開発を積極化、事業拡大に結びつける。

 高付加価値化を念頭に磁性材料用合金粉末など高グレード品を伸ばすほか、バインダーを混ぜた粉末造粒粉(加工粉末)も手掛け、焼結の手前の工程までを行い、川下展開も進めていく。

 拡販に当たっては、現状の売上構成比ではPM品が70%、磁性材料用粉末数%―10%だが、これを02年度には磁性材料用合金粉末を20%(約月間120トン)にアップ。MIM用、DPRやガスアトマイズのPPW(プラズマアーク溶接)、溶射用粉末の比率も高め、PM品は50%程度とする。

 磁性材料用合金粉末では、「アジャスタロイ」を主力に小型、ハイパワー化や、電気ロス低減などのニーズに対応、インバータ、高速モーターなど電気部品などで販路を広げる。DPRでは周波数のアップに応じるほか、ラバー製品のほか、塗料と混合した製品なども志向する。磁性材料用、DPRでは合金の混合量(成分)と特性や、対応周波数帯の相関をデータベース化、オーダー生産なども行う。

 MIM用では粒度の微細化を進める。噴射ノズルの新技術として高圧水とノズルを一体化した「コンファインド・ノズル」を開発、これによって現状では粉末粒径は30ミクロンレベルまで微細化を達成、さらに10ミクロン以下のレベルを目指す。



全 国コイルセンター工業組合(理事長=鈴木貴士・五十鈴社長)は12日、2000年度第3四半期(10―12月)の需要動向見通しを明らかにした。需要はIT(情報技術)分野、首都圏プロジェクト関連の建設などが期待され、鋼板類合計では452万トン(前年同期比2・1%増)と予想。一方、東南アジア向け輸出の減速による在庫増加やメーカーの供給姿勢に懸念が出ており、市況動向には厳しい見方が強い。

 9月末のコイルセンター在庫(自社所有分に限る)は95万トン、前期末に比べて4・2%増加する見通し。4―5月にメーカーの出荷が増加したためだが、7―9月以降は在庫改善の傾向を示しており、12月末時点では9月末比5・3%減の90万トンとなる見込み。

 市況は在庫調整が進まないこと、需要の復調に今ひとつ力強さを欠くことなどから厳しい見方。下半期は東南アジア向けの輸出が減少、メーカーの供給増にも懸念が出ている。また需要家の値下げ要求も引き続き強く、数量の回復=発注増が値下げ理由とされ、価格動向には不透明感が漂う中で弱含み推移の見通し。供給側の生産、販売姿勢がポイントとなる。

 主要業種別の需要見通しは次の通り。

 ▼自動車=堅調に推移してきた軽自動車販売が鈍化、輸出は米国、欧州向けが減少するものの、内需の回復から国内販売量は暦年で600万台超、年度通期の生産計画は1000万台超となる見通し。

 ▼電機=猛暑でエアコンの販売台数が大幅増加。パソコンをはじめIT関連が好調だが、いわゆる白物家電は全般的に停滞。海外生産への移行が続いており、コイルセンター加工量への影響が懸念される。

 ▼建築=住宅関連はマンションが好調、非住宅関連はIT分野での設備投資と首都圏の大型プロジェクト物件に期待感がある。地域間格差が大きい。内装材を中心とする建材需要の増加が見込まれる。



東 海地方では11日を中心に記録的な豪雨となったが、高炉メーカーや鋼材加工拠点の中には一部で設備が冠水したため、操業や製品デリバリーに支障が出ているほか、交通機関の寸断によって従業員が出勤できないといった被害が出てきている。

 1時間当たり114ミリもの雨を記録した東海市に拠点を持つ新日本製鉄・名古屋製鉄所は、所内が冠水したことで一部製鋼・圧延設備などが稼働を休止、復旧工事に努めているものの12日午後2時の時点ではまだ復旧のメドが立っていない。同じく東海市にある鬼頭鋼材・本社工場も冠水によって電気系統の設備や一部の製品が水に漬かるといった被害が出た。このため同社では午前7時から調査・復旧に着手、午前11時前から操業を再開した。ただ、交通機関の乱れによって出社できない従業員も見受けられる。

 半田市にある川崎製鉄・知多製造所は冠水したものの、その後復旧作業を行い通常操業に戻った。

 飛島村地区では工場設備に直接的な被害は出ておらず、東海鋼材工業も工場の稼働に支障は見られないが、遠方の従業員が出社に手間取るケースが見られる。また中部鋼鈑では一部圧延設備などがチェック調査もあって稼働を休止したが、午後からは通常ベースでの操業に戻している。



日 新製鋼は12日、(株)マーキングマジック(本社=東京都港区、遠山元樹社長)と共同で、画像処理意匠鋼板(商品名=グラデス)の画質性能をさらに向上させることに成功したと発表した。この性能向上により、サイン分野(屋内外広告看板など)を中心にグラデスへの関心が高くなっており、需要家からの生産設備導入などの要求にこたえるとともに、潜在需要の掘り起こしによる市場拡大を狙いとし、10月からマーキングマジックと協力してグラデスの生産設備のシステム販売を展開する。なお、システム販売の内容については、きょう13日から15日まで東京ビッグサイトで開催される第42回サイン&ディスプレイショウに同社とマーキングマジックの共同出展し発表する。

 同社は、昨年コンピュータ・グラフィックスを利用して、画像を鋼板の表面に転写する技術を鉄鋼業界で初めて開発し、グラデスとして販売を開始して以来好評を得ている。

 今回開始するシステム販売は、マーキングマジックグラデス事業部が担当する。システム販売の内容は、コンピューター、RIPソフト、インクジェットプリンタ、熱転写機等の生産設備(セット)をはじめ、グラデスの生産に必要なクリアー塗装鋼板、フィルム、布などの転写部材、インク、転写紙の消耗品及び技術サポートサービスなど。当面の生産設備の販売目標は年間50―100セット(1セット当たり販価は800万円程度)を見込んでいる。

 同社は、グラデスの原板となる画像処理用クリアー塗装鋼板を供給するなど、システム販売をバックアップする。

 グラデスは、ステンレス鋼板や白色プレコート金属板(亜鉛めっき鋼板またはアルミ板)を下地とし、表面に同社が独自に開発した特殊なクリアー塗装を施し(画像処理用クリアー塗装鋼板)、その塗膜に昇華熱転写方式によりインクを浸透させ、画像を付与した意匠鋼板。この商品の特長は、インクジェットプリンタによる高品質の画像、屋外用途を考慮した耐光性のほか、製作時の有機溶剤や廃棄処理の際に問題となる塩化ビニル樹脂を使用しておらず、環境にも十分配慮している。

三 晃金属工業(武末浩之社長)はこのほど、同社のアーチ型ソーラー発電屋根では3番目と4番目の物件となる、京都市東山区総合庁舎と松蔭女子大学・厚木キャンパスの屋根施工を完了した。三晃は、キヤノンとの共同開発で水密性など屋根機能と太陽光発電機能を持った屋根材一体型のアモルファスシリコン太陽電池を業界に先駆けて商品化、97年から販売を始めた。99年度は9物件・約7億円を売り上げたが、今年度はすでに7物件を施工、近く数物件の工事着工に入る予定。アーチ屋根の採用増も加味し、10億円以上の販売を目指している。

 ソーラー屋根には横葺きとフラットタイプの2種類があるが、フラットタイプはアーチ(R)加工が可能。とくに曲線のフォルムに対する顧客のニーズが高く、同社のアーチ型製品の引き合いが増加しているという。三晃では今回の物件を含めこれまでに76件(00年8月段階)の採用実績を持ち、アーチ型ではアサヒプリテック・テクノセンター(兵庫県、1時間当たりの発電量20キロワットのシステムを設置)、太陽と風の砦(福井県、8キロワット)の2件に納入した。

 東山区総合庁舎(75キロワット)は、清水寺や八坂神社近くの風致地区にあるため、景観性に重点が置かれた。三晃ではアーチ型ソーラー屋根を乗せ、さらに表面にガラスを使用せずダークブラウンの基調を醸した色彩にしたことで、周辺にマッチした景観性を持たせた。同庁舎にはアリーナ棟(39キロワット)、大会議室棟(31キロワット)、クーリングタワー棟(5キロワット)の3棟があり、設計は大建設計・京都事務所が手がけた。

 松蔭厚木キャンパス(11キロワット)は、設計を担当した竹中工務店の「(屋根材との一体化による)新しいコンセプトの太陽電池」に三晃金属の製品が合致し、採用に結びついたもの。

 三晃では、「学校の体育館や駅のプラットホーム、また庁舎の屋根などで引き合いが増えているアーチ型ソーラー屋根を多くの方々に知ってもらいたい」(担当者)としており、全国ベースでの拡販に努める考え。

日 本鉄鋼協会は、10月1日から3日まで名古屋市千種区の名古屋大学工学部を会場に、第140回秋季講演大会を開催する。3日間を通じて講演会、討論会、シンポジウムが行われるが、討論会では、(1)高温プロセス(材料における非線形現象とは何か、低スラグ化に向けた塊成鉱の製造と技術課題、凝固に始まる材料組織制御とその特性)(2)計測・制御・システム工学(これからの鉄鋼業を支えるアドバンスト制御)(3)材料の組織と特性(鉄鋼の高温酸化とスケールの諸特性、耐熱鋼における微量ボロンの有効利用、超微細粒組織鋼のメタラジー)(4)評価・分析・解析部会(極限分析を志向する新しい物理分析法)について話し合う。

 一般講演は高温プロセス、社会鉄鋼工学、計測・制御・システム工学、創計創質工学、材料の組織と特性、評価・分析・解析―について、シンポジウムは(1)社会鉄鋼工学(人間・社会・環境との新し調和を求めて―XII本州中央部における鉄文化の展開、技術系ヒューマンリソース研究会成果報告会、21世紀の材料工学―研究教育のストラデジー)(2)計測・制御・システム工学(鋼板表面の光学的特性のモデリング)(3)材料の組織と特性(エコマテリアルとしてのステンレス鋼とリサイクル、亜鉛系表面処理鋼板の防錆機構、構造材料の環境脆化における水素の機能に関する研究、チタン系合金開発の新しい展望)(4)評価・分析・解析部会特別講演(原子スペクトル分析法の最近の進歩―全元素分析への挑戦)をテーマに研究成果が報告される。



東 京地区のH形鋼は200×100で3万4000―3万5000円と強含み。メーカーの追加値上げを受けて、商社を中心に流通は3万6000円を唱えて値上げ攻勢を強めている。在庫の減少で品薄感が強まっていくなかで、今後は市況の上昇ペースが速まりそうだ。

 8月の出庫量は7月比2%減と8月としては減少が小幅にとどまり、入庫が8%程度減少したため、在庫は9%程度減少した。流通各社の在庫には長さ切れが目立っており、まとまった引き合いに対しては複数社にまたがって手配するケースが増えている。

 今後さらに品薄感が強まるとみられており、メーカーの受注30%削減で当面解消されない見通しだ。流通はメーカーが9月の2000円に続いてさらに値上げする可能性が高いと見て、売値への転嫁を急ぐ方針で、当面は高値を追う市況展開が続きそうだ。