2000.03.01
新 日本製鉄、NKKなど高炉各社は29日、2000年度積み鉄鉱石価格交渉で、豪州のローブリバー社およびブラジルのリオドセ社と粉鉱価格を前年度比4・35%値上げすることで合意に達した。欧州市場ですでに粉鉱が同様の値上げ幅でマーケットが形成されていることを背景に、粉鉱サプライヤーのローブリバーとリオドセ両社との交渉が先行して合意に向かった。

 しかし、日本市場での2大サプライヤーである豪BHPとハマスレーアイアン両社との交渉は塊鉱価格を巡って難航が続いており、2000年度積み鉄鉱石価格交渉の全面決着には至っていない。

 先行決着したローブリバー粉鉱の価格は22・15セント(DLTU/鉄分1%当たり)で前年度比0・92セント(4・35%)の値上げで、契約数量は1250万トン(高炉7社推定合計)で横ばい。これに続いて合意したリオドセ鉄鉱石はイタビラ粉鉱(SSF)が24・91セント(DLTU)で1・04セント(4・35%)の値上げ(数量は同440万トンで40万トン減)、カラジャス粉鉱が25・41セント(同)で1・04セント(4・27%)の値上げ(数量は同1100万トンで横ばい)。

 昨年12月から始まった2000年度積み鉄鉱石交渉は高炉各社が値下げを、サプライヤー各社が値上げを要求する逆方向の主張が続く中で、1月末に欧州市場でモーリタニアのスニム社とフランスのユジノール社との間で5%強の値上げ合意で相場形成の先陣を切った後、リオドセとユジノールとの間で粉鉱を4%強値上げすることで合意。さらにペレット価格も5・97%の値上げで決着するなど、欧州の鉄鉱石価格は塊鉱を除いて大勢が固まりつつある。

 鉄鉱石価格は94年度積み以降、新日鉄など高炉各社とBHP、ハマスレーのいずれかの間で先行決着し、世界の鉄鉱石価格形成をリードしてきたが、今回、欧州市場が先行決着したことにともない、日豪交渉の進展が注目されていた。

 しかし、塊鉱価格を巡って高炉各社とBHP、ハマスレーとの間で交渉が難航し、過去最高レベルの塊鉱プレミアム(塊・粉鉱価格差=99年度は8・20セントで0・67セント縮小)を主張する両社と圧縮を要求する高炉各社との間の交渉が継続されている。

 鉄鉱石価格は95年度以降4年連続の値上げの後、99年度は10%強の値上げ。日本鉄鋼業全体の鉄鉱石所要量1億1000万トンのうち70%を占める粉鉱価格の大勢が固まったにものの、高炉各社は塊・粉そろっての決着を目指しながら、両社との交渉を進めていく考え。



新 日本製鉄は29日、鉄骨構造の柱・梁の接合システム「ハイパージョイントシステム」を発売すると発表した。鉄骨の高力ボルト接合に使う添板に、従来の2倍の摩擦係数を持つ特殊鋼厚板を使うことで、部材サイズが約半分になり、材料・施工のトータルコストを最大10%削減できる。H形鋼、部材のシステム販売を通じて当面は部材ベースで年間100―200トン、H形鋼で数千トンを目指し、H形鋼の拡販にもつなげる考えだ。

 柱や梁の高力ボルト接合は、添板のスプライスプレートを高力ボルトで締め付けることで、部材間の摩擦力によって力を伝達している。新システムでは添板に、従来の普通鋼厚板に代えて、表面に機械加工と熱処理を施した特殊鋼厚板を使う。この「ハイパースプライス」は摩擦係数が従来の2倍で、従来の半分のサイズで薄肉化も可能になる。

 部材の小型化で必要なボルト数が少ないため、現場の作業時間を短縮でき、軽量化で施工性も向上する。また、従来は摩擦係数を増すために厚板を放置または薬品処理することで赤錆を発生させていたが、「ハイパー」では素材のまま、または塗装面でも性能を発揮するため、従来の工程を省ける。

 システム販売に当たって、外法一定H形鋼、JISH形鋼の全適用サイズについて継手標準図を用意し、継手設計を標準化した。施工を含めた総コストの削減をアピールし、建築・土木以外の鋼構造物全般に採用を働きかける。

 また、「ハイパー」ではボルトの小径化、点数の削減が可能なため、従来はボルト用に孔を開けることで強度が落ちる「ボルト孔欠損」の理由で、溶接工法しか選択肢のなかったケースにも適用範囲が広がる。溶接接合が主体だった極厚H形鋼にもボルト接合の可能性が開けると見ている。

 このシステムは個別認定で4件の施工実績があり、H形鋼の梁、柱、ブレースの接合用途として99年4月に建設大臣の一般認定を取得した。鉄鋼メーカーとしてH形鋼と接合部材のシステム販売は初めて。



鋼 材倶楽部が29日発表した1月末の普通鋼鋼材国内向け在庫は560万4000トンで前月末の546万トンに比べ14万4000トン、2・6%増加した。昨年11月末から増勢に転じた国内在庫は、これで3カ月連続の増加となり、在庫率も0・5ポイント増の120・4%となった。1月の国内向け出荷が前月比10万1000トン、2・2%増の465万4000トンに増えたのが主な要因。ただ、前年同月比では17万7000トン、3・1%減少している。

 輸出船待ち在庫は171万トンで前月末の138万6000トンに比べ32万3000トン、23・3%も増加した。2カ月振りの増加で、前年同月比でも34万8000トン、25・6%増えている。

 この結果、国内、輸出の在庫合計は731万3000トンで、前月末の684万6000トンに比べ46万7000トン、6・8%増加した。

 この在庫をメーカー・問屋別で見ると、メーカー在庫は季節要因に加え、輸出増に伴う船待ち在庫の増加などで前月末の539万8000トンに比べ39万9000トン、7・4%増の579万8000トンに増えた。問屋在庫も前月末の144万8000トンに比べ6万8000トン、4・7%増の151万6000トンに増えた。

 メーカー・問屋在庫合計で前月末比1万トン以上減少した品種はなく、増加した品種は軌条が1万トン増の3万3000トン、H形鋼が1万8000トン増の39万2000トン、小棒が2万7000トン増の67万9000トン、特殊線材が1万8000トン増の6万9000トン、厚中板が3万5000トン増の47万8000トン、鋼帯のは幅600_以上が8万6000トン増の177万5000トン、冷延広幅帯鋼が7万7000トン増の73万4000トン、冷延電気鋼帯が2万5000トン増の12万9000トン、ブリキが2万2000トン増の16万7000トン、ティンフリースチールが1万トン増の11万9000トン、亜鉛メッキ鋼板が10万1000トン増の121万3000トン、その他金属メッキ鋼板が1万1000トン増の11万9000トン、鋼管が1万8000トン増の64万トンになっている。

 この結果、1月末の在庫率は11・6ポイント増の118・1%となった。

 なお、1月の普通鋼鋼材の生産は665万8000トンで前月比7万4000トン、1・1%増加している。出荷は国内向けが465万4000トンで同10万1000トン、2・2%増加し、輸出向けは153万7000トンで同34万2000トン、18・2%減少している。



住 金物産(幾左田隆二社長)は鋼管類の在庫販売、加工販売を目的とする新会社『イゲタパイプ』を設立、3月末をもって解散する別所鋼管の商権及び住金物産・鋼管営業部門の商権の一部を継承し、4月1日から営業活動を開始すると発表した。

 イゲタパイプは本社を大阪市西区新町1―10―9のヰゲタビルに置き、九州、広島、北海道に営業所を構える。資本金は9000万円で全額住金物産が出資する。社長には南尚三・別所鋼管社長が就任、従業員は約50人で、主な業務としては電縫管(構造用鋼管、ガス管、ラインパイプ)、シームレス管(材料管、ラインパイプ)の在庫・加工販売と、その他鋼管類全般の販売を行う。

川 崎重工業は、三井造船との提携の一環として三井の手持ち船1隻(5万総トン)の振替え発注を受け、建造を中断している神戸造船所で商用船の建造を4月以降再開する。阪神淡路震災後、ドックの損傷があったため新造船の建造を中止し、坂出工場のドックを新たに新造船用として再開して2ドック体制としていた。この間、神戸造船所はブロック加工に専念し、坂出のバックアップをしていた。物流コストの問題や艦艇建造のための設備の維持問題もあって商用船の建造再開に踏み切る。三井造船との提携関係も強化される。

 川崎重工は震災後、神戸造船所での商用船建造を中止し、坂井工場を2ドック体制に拡充して操業していた。この間、神戸ではプロック加工を行い坂出に供給して坂出の2ドック体制をバックアップしていた。

 神戸の建造再開は、昨年10月に坂出を1ドック体制に縮小したのと、今後の艦艇建造のために建造体制の維持が必要なため計画された。特に艦艇部門は、神戸だけであるため発注物件の確保面からも長期の新造船建造の中断は不利と判断した。

 再開後の新造船は、業務提携している三井造船からのシフト船で、5万総トン。三井造船の玉野で設計しており、玉野スペックでの建造となる。三井とのスペック共有化にも繋がり、今後の提携関係の緊密化促進に貢献すると見られている。 今回の神戸での新造船建造で、川重の鋼材購入量は再び増加する。昨年10月からの坂出の1ドック体制で、クォータ1万トン程度の鋼材消費が減少しているようだが、過半数はカバーできると見られている。

北 九州市は2003年度の開業を目指して整備している「ひびきコンテナターミナル」の施設整備並びに運営に関してPFI(民間資金等活用)方式を導入する方針である。民間の資金およびノウハウを最大限に活用し、国際競争力のあるコンテナ取扱いサービスの提供を目指すもので、日本の港湾整備に本格的なPFIを導入する先駆けとして注目される。

 「ひびきコンテナターミナル」は、北九州港の長期構想「響灘環黄海圏ハブポート構想」の一環として建設されるもので、西日本や上海以北の環黄海地域から発生する北米・欧州向けコンテナ貨物を中継する機能を持つ。

 2003年度に年間50TEUの取扱いを有する「ひびきコンテナターミナル」を建設するため、97年12月から水深15メートルの岸壁2バース、水深10メートルの岸壁2バース、コンテナヤード36ヘクタール、港湾関連用地47ヘクタールの整備が進められている。

 北九州市では、このコンテナターミナルを環黄海圏のハブポートとして機能させるために効率的かつ一体的なコンテナターミナル運営を実現し、アジアの主要港に負けない国際競争力のあるサービスを提供する必要があると判断、そのために公共事業に民間資金等の円滑な導入を図る目的で制定されたPFI法の活用を図ろうというもの。

 ひびきコンテナターミナルにおけるPFI事業の枠組みは(1)岸壁、埋立地等の基礎構造物は従来通り公共により整備する(2)ガントリークレーン、ヤード内荷役機械等の上物施設は民間事業者が整備し、運営することを基本とする(3)事業に参画する民間事業者は、国内外を対象とした公募方式で選定する予定―などとなっている。

 PFIの導入で北九州市は(1)施設稼働率の向上(2)財政負担の軽減(3)リスク負担の軽減(4)意欲と能力のある民間事業者の発掘などの効果が期待でき、民間事業者は(1)新たなビジネスチャンスの創設(2)収益性の向上(3)長期経営計画の確立(4)PFI支援制度の活用による資金調達の円滑化などが期待できる。

 事業予定は、2000年度に民間事業者を決定し、2001年度に整備(設計を含む)開始する。そして2003年度に開業。

 今後のPFI手続きは(1)国の基本方針の発表を受け、国内外の港湾運送事業者等を対象に公募を開始する(2)応募者についてターミナル運営能力、資金調達力、事業計画等に関し学識経験者等で構成する審査委員会で審査する(3)2000年度中に選定作業を終え、民間業者を決定する予定。



関 西地区の鋼材特約店である吉田鋼業(本社=東大阪市西石切町5―1―22、吉田清社長)は昨年末に中部支店に昇格させた三重加工センター(三重県一志郡香良洲町)の収益改善を図り、今期中(平成11年8月―12年8月)での黒字転換を目指す。支店独自の営業強化に加え、メーン仕入先である川崎製鉄、トーメン、川鉄商事の協力も得て行うもので、最も採算性の悪い同センターを立て直し、今期決算での黒字計上を図りたい考え。

 同社は昨年12月に、本社や北九州加工センターなどのベテラン社員を三重加工センターに投入して、同時に同センターを中部支店に昇格。営業など事務所要員を従来の5人から12人に増やし、これまでの本社営業の下請けに加え、同支店独自の営業展開を行っている。

 同支店の扱い品目はビルドH形鋼、コラム(一次加工)、H形鋼(スポット加工)、厚板などで、現在、月間扱い量は計5000トン強に達っしているが、今後、独自の営業強化でこれを計6000トン(内訳=ビルドH形・厚板2000トン、コラム1500トン、H形鋼1500トン、その他1000トン)の扱い量にまで増やし、採算を確保していきたい考え。同時に、仕入れ、営業などの面で、メーン仕入れ先である3社の協力も得ていく方針。

 同社の業績は1月に単月黒字を達成したものの、この中間期の業績(平成11年8―12年2月)は売上高120億円、経常損失3000万円となる見通し。通期での黒字計上には、中部支店の黒字化が不可欠であることから、下半期での同支店の立て直しに全力を注いでいく構え。

 また、発足から4年目となる工事事業部は今期50億円の売り上げ目標を立てているが、改正大店法に伴う大型スーパーの駆け込みや配送センター、学校、病院などで、現在、未消化の受注分も含めて約45億円の売り上げを確保。今期の目標達成を目指すとともに、今後も素材販売の有効な手段として同社の柱として育成していきたい考え。

東 京地区のH形鋼は200×100で3万1000―3万2000円と横ばい。需要の落ち込みで値上げに対する需要家の抵抗が強く、市況は伸び悩んでいる。流通は在庫の品薄化をテコに今後も高唱えでメーカー値上げの転嫁を図る考えで、当面はこう着した状態が続きそうだ。



 2月の出庫量は1月並みの低水準にとどまったようだ。主力の建築需要の低迷で、市況の上昇も一服状態。入庫減により月末在庫は10%以上減少し、各社の在庫には幅広いサイズで歯抜けが出ているが、市況を押し上げる程のタイト感はないようだ。



 2月の各ミル休止の影響で3月も入庫水準は増えず、在庫の減少傾向が続く見込み。流通では歯抜け状態が強まり、荷繰りが窮屈になると見ており、メーカー値上げ分の転嫁を進めたい考え。当面荷動きは低迷するが、品薄在庫が市況を下支えする状態が続きそうだ。